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うまくいっていないのなら「取捨選択」を
■年度を通して多いご相談は・・・
年度を通して多いのは「がんばって宿題をしているのに成績が上がらない」というものです。
このお悩みには、学習塾の過剰ともいえる「サービス」も関係していると思っています。
入試、特に難関校の入試には、毎年「初見」の問題が数多く出されます。
暗記に頼った学習ではなく、因果関係などをもとに論理的に考えることができるかといったことを見るには、パターン問題では不十分だからです。
学習塾は、そのような問題をどんどんテキストに収録していき、テキストは年を追うごとに肥大化していきます。
いわゆる平常授業だけではそれらを網羅しきれず、講習会、GWの特訓などすべての「オプション講座」が必修化されていく。
受験生とそのご家庭には休む暇がありません。
■がんばっても結果が出ないから、やる気が出ない
そして、最初の質問、ご相談になるのですが、このようなご相談をくださるご家庭のお子さんは、多くの場合やる気をなくしています。
やってもやっても宿題は終わらず、成績にも結びつかないためですが、親としては「そんなやる気がないんじゃ、ますます成績が下がる」と必死でやらせようとする。
ケンカが絶えなくなり、勉強時間にムダな時間がどんどん多くなっていく、という悪循環に陥っていきます。
一度、立ち止まって考えてみましょう。
「ほんとうにこんな量の勉強が必要なのか?」
■うまくいっていないのなら取捨選択を
多くの場合、宿題を整理してやるべきことを最小限に絞ったほうが、結果は出ます。
宿題の取捨選択は専門家以外では難しいのが現実ですが、「基本ができていないのに応用なんて・・・」と感じているなら、いっそ応用問題はカットして、基本的な問題をきちんとマスターすることに主眼を置くのが良いことも多いものです。
その際気をつけていただきたいのは「解き方の丸覚え」をさせないということです。
どうしてそのように考えるのか、なぜその解法で解くのかという因果関係を説明させるようにしてください。
せっかく時間ができても、それを「丸覚え」に費やしてしまうと意味がありません。
うまくいっていないと感じるなら、ちょっと根気は必要ですが、宿題の量と質を調整し、問題を解くのに付き合ってみてあげてください。
■2月18日(土)、秋葉原にてセミナーを行いました。
日経BP社「中学受験 基本のキ!」共著者の小川大介さんと講師を務めさせていただいた、日経DUALさん主催のセミナーだったのですが、いろんな発見がありました。
あらかじめどんな話をしようかと、できるだけ綿密に打合せをするのですが、いざ現場で話すと、さらにどんどんお伝えしたいことが増えていきます。だからついつい2時間の時間内に収まりづらくなっていくのです(笑)。
こんなに伝えたいことがあるなら、あらかじめもっと段取り良く話の構成を組んだのに、と我ながら反省するのですが、そんなことから気づいたことがあります。
■「伝えること」と「伝わること」は違う
私は家庭教師としてご家庭に伺い、お子さん、お父さん、お母さんと毎日話をするのですが、たくさん話をすればするほど、「これは言わなくてもわかっているだろう」という過信がなくなっていくということを感じます。それは相手の様子、状態がわかるからで、「このことはこのレベルまで、この言葉で伝えないと伝わらないぞ」と感じながら話すので、あれも、これも伝えたいという欲求というか、必要性が出てくるのです。
セミナーでは、塾に関してかなり突っ込んだことを話したのですが、塾の授業は「一方通行」になっている場合があります。講師が「伝えること」に夢中になりすぎて、受け取る側の都合、状態に目が配れなくなっているのです。授業の中でひとこと、ある言葉を端折っただけで、子どもはわからなくなるのです。いや、子どもだけではないですね。大人の目からはそういう状態の講師は「訳の分からないことを言っている人」と映るでしょう。
■端折らずに、具体的に伝える
親子の会話ではそこまでひどい状態は少ないかもしれませんが、でもついつい「端折る」ということをしてしまいがちです。あまりにも近い存在なので「これくらいは伝えなくてもわかっているだろう」と考えてしまった経験は、私にも多々あります。
今日のセミナーでは、一週間のスケジュールを立てるにも、志望校を決めるにも、お子さんとしっかり、時間をとって話をしましょうという話をしたのですが、話をすればするほどスケジュールは実行可能なものに近づいていきます。親のフラストレーションが溜まる原因は、実はお子さんのせいではなく、お子さんに伝えていないのに「やってくれるはず」と感じるところにあります。
親子だけでなく、夫婦でも友人でも、具体的に伝えるというのは大切で、とても効果があることです。
他人同士だとできることが、とても親しい存在の、本当に大切な人相手だと、ついつい相手に甘えてできなくなる。
家族ですからそういう優しさも心地よいものですが、ちょっと意識して「具体的に伝える」ということを実行すると、ちょっと生活が変わるかもしれませんね。
■算数の大問2でうろたえなかったか
算数の大問2は、受験生にとっては題意の把握がやや難しく感じられた問題でした。しかもボリュームがあり「けっこう配点が高そう」と焦った受験生も多くいたのではないでしょうか。解いていくと(1)さえうまく乗り切ればOKだったのですが、入試当日、緊張の中難しかったかもしれませんね実際には大問1・3・4が標準的な問題だったので、ここでの失点がなかったが合否の境になったのではないかと思います。
85点満点で、開成中が発表している合格者平均点が54.8、受験者平均点が40.1と、14.7点もの点差がありました。「大問1・3・4が標準的な問題」と書きましたが、それは「開成受験者にとって」ということで、やはり難関校に対応できる受験対策をしっかり身につけてきたかどうかで合否が決まる、いわば「実力通りの結果が出る」問題だったと言えるでしょう。
■理科で合格することはなくても、落ちることはある
一方、理科はどうだったかというと、例年通りの「高得点勝負」となりました。開成中の場合「理社で合格することはなくても、落ちることはある」と言われるくらいで、理科社会の失点が命取りになる場合があるのです。
70点満点で受験者平均が56.8点、合格者平均は61.5点と、より配点が高い算数や国語よりも受験者平均、合格者平均ともに高いという、ある意味開成らしいテストでした。
大問1は燃焼に関する問題ですが、特に計算などもなく、大問2は地層と流水に関するもの。珍しく写真を問題に掲載していますが、地層に傾きはなく、内容は標準的。大問3は動植物の誕生と発生に関する問題。選択問題がやや紛らわしいものもありますが、開成受験者にとってはそ大きな問題ではなかったはずです。大問4はてこと浮力の組み合わせ問題。問7では「棒の左右どちらかの端を支点と考える」と合格者の多くが気付いたのではと思います。
■2018年受験に向けて
ざっくりと言うと、
算数、国語:受験者平均5割・合格者平均6割
理科:受験者平均8割・合格者平均9割(!)
社会:受験者平均7割・合格者平均8割
という結果になった2017年度の開成中学校の入試。理科の高得点化が際立っています。
特に理科社会に苦手分野や意識があるお子さんは、早急に解決して全方位隙のない状態を、受験までに整えなければなりませんね。