本日は日経DUAL主催のオンラインセミナーの講師として登壇させていただきました。
テーマは「入試まで110日 過去問を使いこなす家庭学習のコツ」。
事前に参加者の皆さんから、過去問についての疑問や質問をお受けしたのですが、驚いたのは過去問のやり方についてとても多くのご家庭が困っていることです。
「いつからやればいいの?」
「何年分やればいいの?」
「直しはきちんとやったほうがいい?」
といったことから始まり、第一志望校はどうする?「前受け校」の過去問もやる?などなど、一定の「指針」を示してほしい、というご要望が多いようです。
日経DUALセミナー中のひとコマ
これについては私の私見をセミナーの中でお伝えしました。
ここで「私見」と申し上げたのは、過去問のやり方に絶対的な「正解」はないからです。
お子さんの現状と志望校とのギャップ、どのような目的で過去問を演習するのかによって、やり方は変わってきます。
セミナーでは、麻布中を第一志望校とするお子さんの過去問演習の一例として「芝中学校→海城中学校→麻布中学校」という演習順を紹介しました。
「絶対的な正解はない」と言いましたが、一般的な取り組み方として「おすすめ」のものはあります。
麻布中(だけではないですが)を第一志望校としているお子さんが、今麻布中の問題を解いて合格点をとれる子はまれです。
だから、まずは「思考力型」の問題を出題する学校の中では解きやすい芝中の問題から始め、海城中にステップアップ。
そうやって過去問演習を続けていくうちに、得点力も上がっていきます。
その後で、いよいよ本命の麻布中の過去問、そんなイメージです。
もちろん目的は「合格」ですから、まずは目指すは「合格最低点」です。
私は、生徒が今(10月)の時点で合格最低点に近い(目安としては8割り程度)とれていたら「合格の可能性はかなり高いぞ!」と励ますことにしていますし、実際そのとおりなのです。
とはいえ入試では、誰しも必ず緊張します。
ご家庭でリラックスした状態では解けた問題が、本番では解けなかったということも起こります。
ですから、できれば最終的には「合格者平均点」を目指したいですね。
過去問に関しては、もちろん私が主宰する「名門指導会」でも使い方を指導していますし、主任相談員を務めさせている「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」でも発信していますので、ぜひ活用いただければと思います。
とにかく6年生のこれからは、つけなければならないのは「得点力」です。
過去問演習を中心に、より志望校の出題傾向に慣れることを目指してがんばってください。
今日は主宰する家庭教師「名門指導会」の勉強会でした。
ほぼ定期的に先生方との勉強会で情報交換しているのですが、毎回勉強になります。
■「考える力」を要求される問題
今日は芝中の話題があがりました。
「超難問ではないが、考える力が一定程度ないと歯が立たない問題」
ひとことで言ってしまうと、そんな出題の芝中学校。
絶妙なレベル設定の出題といえます。
たとえば2017年の大問1の計算問題(2)は以下のような数値設定となっています。
20.17−{3.76−(4.81−2.23)}−{11.39−(□+6.13}+5.33=20.24
順序を守って計算するだけなのですが、かなり手を取られるお子さんもいます。
確実な計算力がないと、ここで気持ちが折れてしまいます。
「超難問は出さないが、それなりの準備をしてこないと解けないよ」
そんな出題者のメッセージが聞こえてきそうです。
理数系の先生から共通して出てきた意見は「あるレベルの思考力がつかないと『わからない』『意味不明』に見えてしまうが、問題に見合った思考力がつくと「ぱっと視界が開ける」ように解けるようになる、というもの。
■学力は「右肩上がり」ではない
中学受験ポータルサイト「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」で主任相談員としてご一緒している算数・理科の辻義夫先生が興味深い言い方をしていたのを思い出しました。
彼は受験生のお母さんによく「学力は右肩上がりに上がっていくのではなく、階段を上るように上がっていく」と伝えるのだそうです。
つまり、がんばってるのになかなかできない、と感じている時期もがんばっている分だけ力がついていて、その向上の幅が一定以上になると、急にそれまでできなかった問題ができるようになる、というのです。
これは励みになる表現でもあり、真実でもあると思います。
芝中は、まさにそういう「力がついた!」という瞬間を味わえるようになったら、どんどん解けるものが増える、そういう出題の学校なのです。
芝中を目指している受験生は、ぜひそんな嬉しい気づきを目指してがんばってください。
■中和計算で差がつく理科
理科に関しては、中和計算で差がつきます。
知識問題は短時間で済ませ、計算問題、思考問題に時間をかけたいというのは先生方に共通するご意見でしたが、私もそう思います。
算数と同じく、特に電流の発熱絡みの問題などは、応用力のついていない子にとっては「敬遠したい」と感じるものですが、しっかり過去問を解いて自信をつけておいてほしいと思います。
芝中の2回目入試は、御三家などの受験生の第2志望としても受験されます。
ただ、御三家対応の受験対策をしてきた子どもたちに対して、芝中を目指して勉強してきた子どもたちのほうが「問題慣れ」しているというメリットがあり、一概に成績上位だから合格しやすい、とも言えない状況になることもあります。
芝中受験者には以上のようなことを意識しておいてもらえたらと思います。
前出の辻義夫先生の著作で、私も監修として関わらせてもらった「すらすら解ける魔法ワザ 理科計算問題」は、芝中受験にはちょうどいいレベルとなっています。
計算分野に「苦手」としている単元があるなら、一度チェックしてもらってもいいかもしれません。
あと4ヶ月あまり、気を引き締めていきましょう!