□悩み方が間違っていませんか(3)□
先週は、
入試直前の5~6ヶ月は、知識の収納のされ方が下記の三つのうちどの状態かを
見極めることが大切だということを書きました。
・既に覚え込んで定着している知識や解き方。
・過去に学習し一度は定着したが今は曖昧になってしまったもの。
・記憶からたぐり寄せることが不可能になってしまったもの。
でも、これは御三家レベルの問題の中での基礎から標準レベルの話です。
100点満点で50~60点の配点に当たる部分です。
この部分で確実に40点から50点を獲得することが合格の必要条件です。
その上で、いわゆる御三家らしい問題(初見の難問)への対応力を身につけていく
必要があります。
進学塾の指導は、授業という形式で問題解説が中心です。
問題の解き方の解説という一方通行の指導です。
ところが、入試本番で始めて見る問題を解く力が、過去の問題の解き方を習うことで、
解く力が身につくわけがないのです。
大切なのは、「気づく力」、「自分の頭で考える力」です。
首都圏で出題される問題は、初見の難問といえども、よくよく考えてみると
何らかのパターンを踏襲しているか、何種類かのパターンの組み合わせです。
「題意に基づいて、少し作業をしてみる。まだ解き方が分からない。
もう少し作業を進めながら、過去に習ったパターンの何が使えそうかを
必死で見つけ出そうとする。」
このような過程を経てやっと正しい解き方に近づいていけるのです。
ところが、塾の授業は、
「これは、難しいんだ。ダイヤグラムを書いて、この部分の速さと時間の逆比を使うと、
この部分の速さが求まり、それとこれの速さと距離で鶴亀算を使うと、
ほら、答えが出るだろ。」
大概はこのような流れで授業が進んでいきます。
ダイヤグラムを書く方が良いと気づくこと、
ダイヤグラムを書いた後、速さと時間の逆比が使えること、
その後速さの鶴亀算が必要な事。
この3点全て作業を進めながら、子供たち自身が考えつかなければいけないのです。
どのようにしたら、次の一手が見つかるのかが大切なのであって、
次の一手を教えてもらう事ではないのです。
大手進学塾の小6二学期の志望校別日曜特訓の教材は、該当校の過去の問題や
類似問題を、日本全国の中学校の入試問題10数年分からピックアップして作られています。
それらをもれなく多量にこなす事によって、初見の問題を減らすことを意図しているのです。
この方向性の学習も確かに必要です。
でも、膨大な問題をこなさなければいけない事とそれを忘れてはいけないことが、
大きなハードルです。
それでも、来春出題される問題をz全部当てることはほとんど不可能です。
宝くじに当たるために、宝くじを全部買い占めることを目標にしているようなものだと
思われませんか。
必要なのは、入試本番の試験時間内に、自分自身が次の一手に気付く事です。
パターン的な解き方を使うのだけれど、どのパターンを使うのかを見極める力が
ものをいうことになります。
このような力を養う上で大切な事は、
・気持ちの余裕を持って問題に取り組む事。
・「僕には解けるはずだ」という強い自己肯定感を持ち続けること。
・条件(仮定)をしっかりと把握すること。
・まず、何かを書き始めること。
・書き始めて、これじゃあうまくいかないと感じたら、次の方法に移ること。
多量の問題の繰り返し学習を真面目にやり続けてきた子供たちは、
このような学習を苦手にしている事が多いのです。
御三家志望者の半数以上が、初見の問題に弱いと困っていらっしゃるのではないでしょうか。
・学習プランを単純化して、お子さんの精神的な安定を図る。
・大丈夫だよ。君なら解けるよと励まし続ける。
・解き方を熟知している者が、「何が分かっていて何が求められているの」と質問してあげる。
・「まず、何を書けば良いと思う?」と質問して上げる。
・解き方を熟知している者が、「その方法で、次に何が求められそうかな?」
「何か、他の方法に気がつかないかな?」とタイミング良く言って上げる。
このような事が出来れば、「気付く」力を高めることが出来ます。
親御さんが出来る事と信頼できる第3者(家庭教師や個別指導)に任せることを
分けて考えるべき時期に入ってきたと言えます。
そして、その第3者は本当に信頼に足るかどうか、の判断は、親御様の一番大切な役割です。