カテゴリー: 親の役割 Page 4 of 11
2015年もあと数日。6年生は間近に迫った入試に向け、最後の追い込みに入っています。この時期、子どもたちは「こんなに自分がたくさんのことを覚えられるなんて信じられない」といった意味のことをよく言います。つまり、入試本番がいよいよ迫ってきて、「超本気モード」で勉強しているので、今までとくらべて明らかに記憶力、理解力が上がっていると実感しているのです。
何よりも、集中力が上がっているのがその大きな要因ですね。
そんな姿を見ていると、それではもっと早くから「超本気モード」にさせることができれば、どんどん成績を上げられるのではないか」と考えてしまいがちですが、なかなかそううまくはいきません。
子どもを本気にさせるために、ついつい大人がとってしまいがちな行動が、「叱咤激励」。
それ自体が間違っているわけでも、悪いわけでもありません。そして叱咤激励している時の大人が言っていることは「正論」です。
でも、正論だったら言われた子どもは納得して聞き入れるかと言われると、そうではありません。そもそも中学受験を目指して塾に通う子どもの多くは、すでにまじめに、一生懸命勉強しています(少なくとも本人たちはそう思っています)。そこへ正論を振りかざされると、多くの場合反発の気持ちしか生まれてきません。
中学のときに習った英語の構文に
「命令文+and〜」
「命令文+or〜」
というのがありました。
上の構文は、
「◯◯しなさい、そうすれば〜」
という意味で、下の構文は
「◯◯しなさい、さもないと〜」
という意味だったと記憶しています。
下の構文で子どもに話し続けると、子どものモチベーションはどんどん低下して、お母さんに叱られるから、といったマイナスの動機でしか動かなくなっていきます。
「算数の復習をしておかないと、次のテストでいい成績が取れないわよ。」
ここまで露骨ではないにせよ、ついついこのようなトーンで話してしまいがちかもしれません。
お子さんと過ごす時間が長くなる冬休み、意識的に「伝え方」にこだわってみるのもいいかもしれませんね。
近年の中学入試、とくに難関校の入試では、「この問題の解き方を知っていますか」というような問題は出題されません。「あなたはこの問題の解き方を見つけることができますか」といった出題なのです。つまり、持っている知識をもとに、組み合わせて、複雑に作りこまれた問題で「何がわかっているのか」を整理し、「あと、何がわかれば問題を解決するための筋道が見えやすくなるか」を、自分の力で考えることが必要なのです。
「年齢算の解き方は線分図」と覚えるような勉強を、私は「暗記型学習」と呼んでいます。この学習を小さい頃から続けていると、小学校高学年で成績が下がります。勉強自体が楽しくないというのも、この勉強法の特徴です。 覚えることが主体で、「考える」という要素が少ないからです。
「二人の年齢を見やすく比べられたら」⇒「線分図なら比べやすい」
だから線分図なのです。今考えたいテーマから考えて、使うべき図は何か。その知識が必要なのです。知識というよりも、反射という感じで一瞬で「比べる」⇒「線分図」が出てくるまでになったら、それが本物の知識で「打てば響く」というのはこういう状態です。
ここ2回にわたって、図形問題を解くときの知識の大切さをお話ししてきました。
ところが、知識をいくら覚え込んでも目の前の問題に利用できなければ宝の持ち腐れですね。
利用すべき知識を素早く的確に思い出すための方法をお話しします。
(普段やっておくこと)
・まず問題文を隅から隅まで読むことを習慣にする。
問題の分を読まずに、これが聞かれているはずだと思い込んで解こうとする子供が意外に多いのです。
それでもたまに正解になることがあり、悪い習慣を修正するチャンスを失いがちです。
・問題の条件をすべて図に書き込むことから始める。
辺の長さや角度など与えられている条件をもれなく、しかも読みやすく書き込むことが大切です。
凝視しないとわからないような小さな字もダメですし、どこからどこまでの長さかが曖昧な線の引き方もよくありません。
そして、問題についている図をそのまま丸写しするのではなくて、問題文に書いてある条件に沿って問題文を読みながら
書き込む習慣をつけさせることです。
ここで注意して頂きたいことがあります。
テキストに書かれている図が小さい場合は必ずノートに大きな図をフリーハンドで書き直させてください。
たとえば、サピックスのデイリーサポートの図ならば、長さで2倍ぐらいの図を書かせることが必要です。
入試問題そのものに書かれている図がそのぐらいの大きさですから。
・「たぶん」「何となく」を一切使わせない。
子供が解いた跡を見ると、理由無く「90°」と書いてあったりします。
「なぜここが90°になったの」と聞くと、無言になるか、「そう見えたんだもの」と答たりします。
それでも4年生や5年生の段階では半分ぐらい結果が正しくなります。
ところが、6年生になり扱われる問題が入試本番レベルになると、直感で答えた数字がことごとく間違うようになります。
理由は簡単です。直感や当てづっぽうで答えると間違えるように作ってあるからなのです。
子供が、直感や当てづっぽうで解いている現場を見つけると、親としては叱りつけたくなるものですが、ぐっと押さえてください。
子供は直感的な動物です。そのいい加減な直感も正しい経験を積ませていけば、難問を解く際の「気づき」につながります。
「なぜ、○○になったの?」とニヤニヤしながら聞いてやってください。
それを何回か繰り返した後で、「図形問題で、原因と結果をつなぐ頭の体操をしているんだから、
当てずっぽうをやっていると頭の使い方のフォームが崩れちゃうよ」とでも言ってあげてください。
・図形問題を解き終わった後に、どんな知識を使ったのかを振り返る。
ほんの10秒で構いません。
「こことここの相似を使って、その後は辺の比から面積の比に変えたんだ」とか
「円の中の直角三角形を使ったんだ」
というように振り返ってみることです。
そのほんの10秒の頭の中での振り返りが1回分以上の効果があります。
はじめに練習させる際は、お母さんが横について、
「よくできたね。これを解くのにどんな知識をどんな順に使ったのかな?」
と1問ごとに聞いてあげてください。正確に説明できなくても構いません。
子供なりの要約された言葉で構いませんが、「何々を何々に使うと」というように「てにをは」をしっかりと発声させてください。
3回にわたって、図形問題の学習について書いてきました。
図形問題を正しく学習していくと、論理を正しくつないでいく能力が鍛えられます。
そしてその先のひらめきも少しずつ高めていくことができます。
これらの能力の高まりは、算数の文章題や他の教科に大きな好影響を及ぼします。
うちの子、直感頼りの勉強じゃないかしら、と思われたなら、
お子さんの勉強の様子を見るところから早速始めてあげてくださいね。