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今年の主な学校の入試問題を解いてみると、今年話題に上がることが多くなった「アクティブラーニング」という言葉が頭のなかにふっと浮かぶことが多かったように思います。
アクティブラーニングとは、単なる知識の伝達や「教え込み」ではなく、子どもたちが自発的に問題を見つけ出し、あるいは設定してその解決法を考えることができるような、能動的な学びを意味すると私は受け止めていますが、今に始まったことではない、と自信を持って言い切る学校も多いのではないかとも思います。
私が「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」というポータルサイトで主任相談員としてご一緒させていただいている小川大介さんが主宰する個別指導「SS-1」では「発問応答」と呼んでいるそうですが、一方通行の授業ではお子さんの頭は活性化しません。
教える側も生徒たちと意見交換しながら切磋琢磨し、一緒に考え、子どもたちが「考え方を考える」ことができるような授業が、教える側も、教えられる側も刺激があり、充実した授業です。そのようなやり取りを、問題文中に「対話」という形で出題する学校が増えているのは、各中学校もそんな授業を楽しいと感じる子どもを求めている証拠だと感じます。
昔からこういった出題をしていたのが、関東では御三家であり、関西では灘中学校をはじめとする最難関中学校です。
「覚えているだけじゃダメなんだよ」
「今ここで、与えられた条件を手がかりに考えてごらん」
そう出題者から問いかけられているような問題。
謎を解き明かした瞬間に、「ああ、なんて素晴らしい謎解きなんだ」と感動してしまうような問題。
難解、複雑で苦心した挙句に、そういった快楽が待ち受けているような問題は、解く人を成長させます。「わからないからいいや」と投げ出すか「わからないことはわかるまで考える」と立ち向かうか。
大げさに言えば、そんな「生き方」みたいなものにつながるのが、良い出題者が考える、良い問題だと私は考えています。
そのような出題をする学校が、確実に増えています。
そういう学校の問題を楽しめるような子どもたちを育てるのは、大人の見識であり、責任なのかもしれません。
2015年もあと数日。6年生は間近に迫った入試に向け、最後の追い込みに入っています。この時期、子どもたちは「こんなに自分がたくさんのことを覚えられるなんて信じられない」といった意味のことをよく言います。つまり、入試本番がいよいよ迫ってきて、「超本気モード」で勉強しているので、今までとくらべて明らかに記憶力、理解力が上がっていると実感しているのです。
何よりも、集中力が上がっているのがその大きな要因ですね。
そんな姿を見ていると、それではもっと早くから「超本気モード」にさせることができれば、どんどん成績を上げられるのではないか」と考えてしまいがちですが、なかなかそううまくはいきません。
子どもを本気にさせるために、ついつい大人がとってしまいがちな行動が、「叱咤激励」。
それ自体が間違っているわけでも、悪いわけでもありません。そして叱咤激励している時の大人が言っていることは「正論」です。
でも、正論だったら言われた子どもは納得して聞き入れるかと言われると、そうではありません。そもそも中学受験を目指して塾に通う子どもの多くは、すでにまじめに、一生懸命勉強しています(少なくとも本人たちはそう思っています)。そこへ正論を振りかざされると、多くの場合反発の気持ちしか生まれてきません。
中学のときに習った英語の構文に
「命令文+and〜」
「命令文+or〜」
というのがありました。
上の構文は、
「◯◯しなさい、そうすれば〜」
という意味で、下の構文は
「◯◯しなさい、さもないと〜」
という意味だったと記憶しています。
下の構文で子どもに話し続けると、子どものモチベーションはどんどん低下して、お母さんに叱られるから、といったマイナスの動機でしか動かなくなっていきます。
「算数の復習をしておかないと、次のテストでいい成績が取れないわよ。」
ここまで露骨ではないにせよ、ついついこのようなトーンで話してしまいがちかもしれません。
お子さんと過ごす時間が長くなる冬休み、意識的に「伝え方」にこだわってみるのもいいかもしれませんね。
12月11日、主任相談員を務めさせていただいている「中学受験情報局」との共催セミナーを開催しました。
今年は11月の開催で最後にしようと考えていたのですが、
「2月から新しい学年になる前に、この冬どんなことをさせればいいですか?」
「結局この1年、成績が上がらずじまいでした。このまま学年が上がったら、上がるどころか下がるんじゃないかと不安です」
といった声をセミナー後にたくさんいただき、なんとかもう一度、年内にみなさんにお話しする機会を得られないかと考えた末、ウェブセミナーという形をとらせていただいたのです。
セミナーの中でもお話ししたのは、冬休みには冬期講習会があるから、そこで今年の総復習をやってくれる、と漫然と考えていては期待はずれに終わる可能性があるということです。大手進学塾で、講習会が純粋に復習というのは日能研くらいで、サピックスはカリキュラムがどんどん進んでいくタイプの塾ですし、四谷大塚系のカリキュラムも、予習単元がかなりの量入っています。
苦手な単元は冬期講習会で、ではなく、冬期講習が始まる前になんとかしておくというのが望ましいのです。そういう視点で冬休み前のスケジュールを眺めてみると、冬休みの開始から冬期講習が始まるまでの期間や、冬休み前に短縮授業の期間があるならその期間が目についてくると思います。
また日能研のように講習会が「復習型」の塾の場合、講習会で新しく習うことは少ないですから、「もうじゅうぶんできるから、あらためて授業で教えてもらうまでもない」といった単元をどうするかをあらかじめ考えておくといいですね。そのような単元の学習は思い切ってお休みして、苦手科目や弱点単元の学習に充てるという手も大いにありなのです。
関西の浜学園も、講習会は復習というタイプの塾ですね。もちろん希学園も似たカリキュラムを持っています。塾からは「講習会には必ず参加してください」と言われると思います。でも、本当に必要かどうかはご家庭が決めること。参加するかどうかもそうなのですが、1日1日、この日は出席するのかということも考えるのが結局はいいように思います。
気をつけていただきたいのは、冬休みは意外に短く、クリスマスや年末年始など(親御さんも)バタバタしがちで、なんだかこれといったこともできずに過ぎ去ってしまった、という結果になりがちだということです。
だからあらかじめ塾のカリキュラム、ご家庭の行事予定などをしっかり確認し、「いつ、何を」するかをしっかり決めておくことが大切なのです。そして、その予定はあらかじめお子さんに共有するようにしておきましょう。お子さんはお子さんで、学校がお昼までで終わるのなら友達と遊ぼう、と考えて約束して帰ってくるかもしれません。だからあらかじめ「この日は◯◯の復習をしようね」と声をかけておくことで予定をおさえておくのです。
2月には塾の学年が上がります。学年が上がると、授業時間が長くなったり通塾日数が増えるなど、お子さんの負担は増えることはあっても減ることはありません。そして塾の日数や授業時間が増えたら、そのぶん宿題も増え、ダブルでお子さんに掛かる負担は大きくなるのです。(塾の時間が1.5倍に増えたら、その宿題もおよそ1.5倍に増え、お子さんの感じる負担はそれまでの2倍以上、ということも珍しくはありません。
今5年生のお子さんの親御さんなら、4年制から5年生に上がった時のことを思い出していただきたいのですが、次に6年生に上がったときには、5年生になったときよりもさらに負担感は大きくなるはずです。
だから、この学年で気づいている苦手はこの学年のうちに克服、ということを目指して、のこりの2ヶ月足らずを過ごしていただきたいと思います。
周到に、新しい学年に備えていきましょう。