算数がなかなか伸びないと悩んでいらっしゃる方へ。
頭の出来が良いのに、成績が不安定なお子さんがサピックスに多いような気がします。
そんなことまですぐに連想できるんだと感心するほどスピーディーな思考が出来るお子さんの中に、こんなに易しい問題をなぜ間違うんだろうと意外な感じを受けることが多々あります。
1昨年に相談があったサピックス小6のα2の男の子の話をしてみましょう。
お母さんからの相談は、
「宿題は、信じられないほどのスピードでやり切ってしまう。分かっているのかと思って聞いてみるとちゃんと分かっているようだ。でもテストが安定しない。良いときには150点中130以上を取ってくることがあるのに、80点ぐらいの時もある。心配だ。」
というものでした。
事務所にお母さんとお子さんを呼んで話を聞いてみました。
知的好奇心が強く、非常に物知りなお子さんでした。
少し算数を教えてみましたが、まさに1を聞いて10を知るタイプというのでしょうか、少しヒントを与えるだけで、解き方を見つけることが出来ます。
ところが、式を書かせようとすると書けないのです。
計算だけでも構わないよと言ったところ書き始めたのですが、殴り書きです。
暗算力も優れていました。
240×2.25を、筆算せずに暗算で答えを出してしまいます。
聞いてみると、2.25倍というのは、2倍と後その4分の1を足せばいいから、240の2倍で480。
それに240の4分の1の60を足して540としたというのです。
ノートには式も計算も書かれていなくて、ただ540という答えだけが書かれています。
いろいろな数字を頭の中において、必要に応じて処理することが出来るという点においては、抜群の出来です。
ところが、点数が悪かったテストを見ると、大問の2番からたくさん間違っています。
普通は問題用紙に残った計算の跡を見るとどういう方法で解こうとしたのかが分かるのですが、その子の問題用紙には所々に数字が残っているだけです。
しかも、その問題から遠く離れたところに書いてあったりしました。
その子は、式を書くのが面倒だから、これまでも書かなかったと言うのです。
今の算数の得点の不安定さが、6年生単元に入ってひどくなったことから、次のように考えてみました。
・算数の解き方はすぐに理解できる。
・処理を頭の中で全部やろうとしている。
・数字の処理をしているうちに、今何をやっているのかをわすれてしますう。
また、何をやっているのかを思い出しているうちに、頭の中にあった数字が入れ替わってしまうこともある。
そこで、その子の第1志望校の麻布の算数の解答用紙を見せてみました。
「ほら、この2問は考え方や式を書く欄があるだろ。ここに式や計算をちゃんと残していないと点数がもらえないんだよ」と脅してみました。
その後に、「計算の前に式は書こうね。まとまった式で無くって良いから、今から計算しようと思っている式を書こうね。」と言ってみました。
またお母さんには、式を書いているかどうかを見張ってもらうことにしました。
しばらくしてお母さんから電話がありました。
「式を書いてねと言うと、『分かっているよ、くそババ?』と言って式を書いてくれません。どうしたものでしょう。」とおっしゃるのです。
子供に電話口に出てもらいました。
「解くときに式を書いたらどんな良いことがありそう?」
「ミスが減って点数が上がりそう。」
「そうだよね。じゃあ式を書こうと思うかな?」
「うん」
「じゃあ、今日これから解いたノートを先生にFAXしてきて、出来るかな?」
「うん」
このような電話を何度か繰り返すうちに、5月のマンスリーがありました。
なんと140点です。
それ以降も、ミスが増えるときもありましたが、式を書こうねと言い続けていきました。
11月の志望校判定では合格可能性80%以上が出ましたし、麻布中学に合格しました。
このように、難しい問題になってくると、処理能力の高い頭脳を持っていても処理しきれなくなるのです。
一度式に書くことによって、頭のメモリーを解放して次の思考に入っていけます。
よく分かっているはずなのに点数が取れないと思われる場合は、解いた後に式が残っているかどういかを見てあげてください。このような子がサピックスには多いような気がします。