□作業記憶力とは□
作業記憶力とは、パソコンで言うとメモリーの働きです。
パソコンの動きが遅くなったら、メモリーを増設してみると急に早くなったという経験をお持ちのの方も多いでしょう。
人の頭もこの点では、同じような構造で出来ていると考えられます。
2桁×1桁の暗算を一度意識してやってみてください。
はい、いいですか?
「87×6」
目を、パソコン画面から外してください。
問題は何でしたか。そうですね、87×6ですね。
「はちじゅうななかけるろく」と音声で思い出しましたか、それとも、数字を画像として思い出されたのでしょうか。それらの音声情報や画像情報が、数の大きさを表す数字として頭の中で翻訳されて、意味を持ちます。
7×6=42ですから、1の位は2です。いくつ繰り上がったのでしょう。4ですね。この4を覚えておいて、・・・・。あれっ、もとの2桁の数字は何だったのでしょう。このあたりで、記憶が途切れてしまう方も、実は多いのです。
そうですね87ですね。8×6=48ですから、繰り上がりの4を足して52。え?と、1の位はそうそう2でしたから、522です。
この単純な計算ですら、いろいろな数字を同時に覚えておかなければ行けないことがわかります。
□3行の壁□
「3行の壁」という言葉が、塾の先生方の中にあります。
「あの子には、3行の壁があるから、この算数の問題は厳しいだろう。」というように使われます。
3行までの問題だったら解けるのに、3行を超える文章だととたんに解けなくなることを指します。このようなお子さんが実に多いのです。
4行目を読んでいると、1行目を忘れていきます。5行目を読み終わったときには、1・2行目を忘れてしまっていて、どんな条件が書いてあったかを思い出せません。
そこで、もう一度読み始めましたが、5行目に書いてあったはずの、何を問われているのかを忘れてしまっていて、目の前の数字をどのように利用すれば良いのかに気がつきません。
このような症状です。
小4生あたりでは半分以上のお子さん、小5生でも半分近く、小6生でも30パーセント以上のお子さんがそうでしょう。
この3行の壁は、作業記憶力の問題だけではなくて、文章を読み飛ばしてしまうという、読み方の習慣も原因ですが、作業記憶力が高まれば、解消できてしまうことが多いのです。
□作業記憶を高める簡単な方法□
いろいろな人から話をお聞きした中で、私が「なるほど」と思った方法です。
また、実際に子供にやらせて効果が現れたものです。
・車のナンバプレートを足し算させる。
お父さんが運転している車の後部座席にお子さんが座っています。その横を、スポーツカーがすごいスピードで追い越していきました。ナンバープレートは、「品川3 54・2・・」
見えていた時間はほんの1?2秒です。
その間に計算は終わりません。
目の奥に残った(頭に残された)残像を頼りに計算を続けます。
・複数個以上のお手伝いを、同時に頼む。
「カーテンを開けてから、新聞を取ってきてね、それから、ねねちゃんにドッグフードをやって、水も替えておいてあげてね。」これで、4つの作業を同時に
頼んだことになります。一つ一つのお手伝いが、面倒なものでは、いやだな?という感情が邪魔をしてしまいますから、簡単にできそうなものをお願いします。
買い物のバージョンもあります。
「スーパーに行ってきて欲しいんだけど。生姜1袋と、ピーマン一袋、あとお砂糖が無くなってしまっているからそれもお願いね。それと、卵、Mサイズがいいわね。行ってくれたら、ご褒美に100円以内のおやつを買ってもいいわよ。」
生姜とおやつだけを買ってくるお子さんも多いのですよ。
メモをさせずに頼み事をすることがポイントです。
・勉強中に問題内容を聞く。
「太郎君は、2000円持って買い物に行きました。30円の鉛筆5本と、120円のノートを4冊買っておつりを・・・・」
このあたりで、問題を手でパッと隠します。
「太郎君が買ったものは?」
と聞いてみます。このときのお母さんの顔は、笑っていてくださいね。ちょっといたずら心でやってみたのよ、という雰囲気が大切です。
・計算式を写す時に問題を見て良い回数を決める。
短い式ならば1回、長めの式ならば2?3回ぐらいが適切です。
この、作業記憶力は、低学年から発達し始めますし、小学校高学年でも発達し続けるもののようです。
うちの子は、すぐに忘れてしまうから仕方がないとあきらめずに、いろいろな練習を楽しく続けてください。