今回から、実際に寄せられた相談の中で、教科の学習法に関するものを中心に書いていきたいと思います。今回は「計算間違い」です。これだけで数回分になりそうです。

 

相談1位

 算数の計算間違いが多くて困っています。1番の(1)を間違っていたのには開いた口がふさがりませんでした。

 

 計算ミスを減らす方法についてのご相談は、本
当に多いのです。実際に家庭教師の現場では、お預かりするお子さんの80%には、計算ミスの対策を講じなければいけない状態です。それは、計算の書き方や
繰り上がり繰り下がりの処理の仕方などの細かい指導がこれまでなされていなかった事が大きな原因です。それ以外にも、指導者に正確な計算に必要なお子さん
の能力を高めるという視点が無いことも原因のような気がします。

 小学校の頃に計算間違いが多かった子供も、中学高校と進むにつれいつの間にか計算間違いが少なくなっていることが多いですね。これは、経験の積み重ねとも言えますが、大人になる課程で自然に身についた能力に負う部分が大きいと考えています。

 ところが、大人になるのを待っていては中学受
験に間に合いません。場合によっては、後3ヶ月以内に何とかしなければいけない事もあります。切羽詰まった家庭教師の現場での試行錯誤の結果、「こうすれ
ばうまくいった」、そしてその理由はこういう事じゃないかなということをお話ししていきたいと思います。脳科学の専門の先生方から見れば自明のことや、そ
んなことはないとおっしゃることがあるかもしれませんが、現場での実感を率直に書いていこうと思っています。

 

車のナンバープレートの数字をすぐに覚えられる子は、計算が得意。

 

 「品川 い 3 21-56」なんて書いてあるナンバープレートです。

 「うちの子、小さい頃から、ナンバープレートの数字をすぐに覚えてしまって、「あの車はちょうど80だね」というように数字をすぐに足していました。大人は、その車が既に遠くに行ってしまった後でそんなことを言われても答えようも無かったのですが。」

 算数が得意で、計算間違いが非常に少なかったお子さんの話です。目の前の車のナンバープレートの数字をその場で足すこともあったし、ぱっと見た数字を覚えていて、見えなくなった数秒後に答えを出すこともあったとうことなのです。

 これは、いわゆる「短期記憶」(メモリー記
憶)の能力だと考えています。明日には、時には数分後には忘れてしまうのだけれど、数秒間から数十秒間ははっきりと覚えておける記憶の能力です。そして短
期記憶には質の問題があると思うのです。目から入ってきた映像の残像から数字を正確に読み取る能力とそれに要する時間の問題です。

 「「69」と出たのに、解答用紙には「96」と書いちゃった」という間違いがよくあります。計算欄で出た数字を回答欄に写すほんの数秒の間に、記憶が替わってしまったのか、それとも数字の映像を数の意味に置き換えるときにエラーが起きたのかのどちらかです。

 計算間違いの多い子が計算をするところを見ていると、共通する事柄があります。数式を写すときに何度も何度も問題を見るのです。

例えば、

25644)÷10?15= という式を写すのに、「(」を見てノートに書き、「256」を見てノートに書き、「+」を見て…というように何度も目線が往復するのです。ところが計算が得意な子は、少なくとも「(25644)」と1回で写すことが多いのです。

 

 これまでに、この「短期記憶」の能力を伸ばして計算の能力向上に効果がが合った方法は、「2桁×1桁」の暗算訓練です。

 お母さんは、思いつきで2桁と1桁を言います。お子さんはそれをかけた数を答えるという練習です。ポイントは紙に書かない事です。試しに、今やってみてください。

56×7」。すぐに、この数字から目をそらせて計算してみてください。6×742だから4を覚えて、十の位は何だったけな。そうだそうだ5だな。5×735
から、繰り上がりの…。アレッ、繰り上がりはいくつだっけ。子供の頭は、かけ算と記憶と思い出し作業をめまぐるしく行っているはずなのです。これを、1日
に5?10問程度遊び感覚でやってみてください。お母さんと一緒に入っているお風呂の中で、3つ出来たら湯船から上がろうか、というようなやり方がお勧め
です。早い子で2週間、遅い子で2ヶ月程度で効果が出ます。

 

 この方法は、耳から入ってくる情報を覚える訓練です。

数字を記憶する場合、音として記憶する場合と、映像として記憶する場合があると思うのです。


自分自身の記憶作業を思い返してみて、電話番号などの
長い数字は、何度か声に出してみて音声として記憶する事が多いように感じますし、短い数字は瞬間的に映像として覚えようとしているように思います。ですか
ら、上記の方法の変形も何度も試してみました。2桁と1桁のカードを用意しておいて、両方を3秒間だけ見せて、それを隠した後で答えを聞く事も大きな効果
がありました。

 そして、計算のスピードアップにもめざましい効果がありましたので、是非お試しください。