いよいよ2021年も終わりを迎えようとしています。
来月からは関西、2月からは関東の主な中学校の受験本番が始まりますが、心の準備はいかがですか?

今日はそんな皆さんに、試験本番で知らない言葉に出くわしたらどうすれば良いかというお話をしようと思います。

特に国語読解での話になりますが、皆さんはこれまで様々なテキストや問題集に取り組み、二字熟語、四字熟語、慣用句、ことわざはもちろん「矛盾」や「五十歩百歩」のような故事成語に至るまで、たくさんの語句を身につけてきたことと思います。

しかし、それでも試験当日、問題文で見たことも聞いたこともない(時には読むことも出来ない)言葉に出くわすことはあるものです。

そして、それが「アナーキー」のようなカタカナ語ならともかく、「面従腹背」や「堂に入る」などの漢字や熟語を含んだ言葉の場合、真面目な生徒さんほど焦ったり、その言葉が理解できないことで「本文を正しく把握出来ないのでは」と不安で立ち止まってしまったりしがちです。
さらに、「「堂に入った」とあるが、どのような様子からそう感じたのか」などと、その言葉が分からなければ設問の意味さえつかめない場合は、余計に怖くなってしまいますよね。

けれど、読解の時間は限られていますから、いつまでも分からない言葉ひとつに固執して目や手を止めているわけにも行きませんよね。

そんなときは、あせらず以下のことにトライしてみましょう。
【知らない言葉に出くわしたら、やってみよう!】
・前後の文脈から予想を立てる。
・語句に含まれている漢字を一文字ずつ訓読みしてみる。
・漢字の部分を用いた言葉を連想してみる。
・偏や旁(つくり)など同じ部分を持つ漢字を連想してみる。

いくつか実際にやってみましょう。
①「彼は『憤慨』し、足元の椅子を突然蹴飛ばした」
②「夏祭りは毎年の楽しみだったが、その事実を知って彼は一気に『興ざめ』した」
③「江戸では、京伝好みと銘(めい)うった『煙管』が売られていた」
④「こうして肚(はら)の中で考えたことを(漱石)先生の前で十分に云い得なかったということは……一種の『面従腹背』でもある」
⑤「彼は『無二』の友だ」
⑥「『広義に』解釈すれば……」

【言葉の意味の導き方(予想の立て方)一例】
①突然椅子を蹴飛ばしたのだから、ものすごく怒ったのかな。「憤」は、「噴火」の「噴」と旁(つくり)が同じだ。つまり「噴火するくらい怒った」という意味かな。
→「憤」・「慨」を「いきどお(る)」と訓読みできればベストだけれど、習うのは中学3年ごろなので、今はこのように文脈や漢字の一部から予測できればOK!

②「楽しみであった『が』」とあるから、そうではなくなったのかな。「興」は、「興味」の「興」だから、「興味」が「さめ」たということかな。

③「煙管」の「煙」は「けむり」。「管」は「くだ」。(売られている)けむりのくだ……つまり、「タバコ」のことかな?これは江戸時代の話だから、きっとこれは「きせる」のことだ!
→文脈からの予想は難しくても、このようにそれぞれの漢字を訓読みすると予測できるね!

④国語では「腹黒い」「腹の内を明かす」など、「腹」は本心を表すことがあるな。ということは「肚(はら)の中で考えたこと」ということは、「本心」のことかな。
「面従腹背」の「面」は「おもて」と読み、「お面」という言葉もある。つまり、「表面上や顔では従いながらも、本心では背(そむ)いている」ということかな?
→このように、自分の語句の知識を駆使して連想することも大切!

⑤「無二」は「無い」と「二つ」を組み合わせた熟語だ。つまり「二つと無い」とか、「並ぶものがない」ということかな?

⑥「広義」の「広」は「広い」。「義」は「義(よ)い」と読み下せるけれど、それでは分からないな。「義」を使った言葉では、「同音異義語」という言葉を知っているぞ。「同音異義語」は「同じ読みで異なる意味の言葉」だから、「義」には「意味」という意味があるはずだ。つまり、「広義」は「広い意味」ということかな?
→予想が立ったら、該当箇所に当てはめて読み直してみよう。
「『広い意味』で(に)解釈すれば……」となり、バッチリ意味が通るね!

このように、たとえ知らない言葉に出くわしても皆さんがこれまで培ってきた漢字・語彙力、読解力、柔軟な思考力で乗り切れる場面は多々あります。
ですから、そんなときはまず上記の方法で冷静に分析してみてくださいね。

それでも分からないときも、焦る必要はありません。
読み進むうちに文章の流れから意味が分かることもありますし、その言葉が分からなくとも、問題を解く上では何の支障も無いこともあります。
大切なのは、どんなときも目や手は止めず(思考停止せず)、冷静に対処していくことです。

そして、普段の学習や過去問演習の際も、分からない言葉が出てきた時にすぐ辞書を引かないことを心がけましょう。
低・中学年のうちは間逆のこと(「分からない言葉があったら辞書を引く」ということ)を言われていたと思います。
しかし、入試本番に辞書は引けませんし、高学年や本番で扱われる文章には難解な言葉が当たり前に含まれているものですから、分からない言葉があっても、自分の力である程度意味を予測し、読み切り、問題に取り組める力が必要なのです。

そのためには前述の通り、漢字、語彙力、読解力、柔軟な思考力が欠かせません。
そしてもちろん、全て解き終えた後は、つまずいた言葉を辞書できちんと調べ、語句用のノートなどにまとめて覚えておきましょう。

皆さんが、試験本番も冷静に、存分に実力を発揮できることを祈っています。