■秋から5年生が直面するテストとは

 
小学校5年生は、この時期からは今までとは違ったタイプのテストを受けることになります。志望校判定テスト、志望校診断テストといった類のテストで、ふだんの公開テストなどと違って、入試を強く意識したテストです。
 
入試を強く意識したテストというと、普段の公開テストとどう違うのかですが、今日はそのあたりを説明し、実際に点を取るにはどういう勉強をすればいいか、ということを考えてみたいと思います。
 
真面目に塾の普段の宿題をこなしていて、毎週の「復習テスト」で点が取れているのに、こういうテストになると急に点が取れない・・・そんなお子さんは多くいます。お母さん、お父さんはそんなお子さんを見て「うちの子って実力がないんじゃないか」「習ったときは覚えているのに、時間がたつと忘れてしまうんじゃないか」と心配するようです。
 
こういうお子さんは、「実力」がないのでしょうか。
 

■「実力がない」というより「応用力がない」

 
これは一面ではあたっています。「実力」というのが、習ったことをそのまま答える力でなく、それらを組み合わせて、今まで見たことがない問題に当てはめて考える力だとすれば、このような大きなテストで点が取れない=「実力がない」ということになりますね。
 
ただ、「習ったときは覚えているのに、時間がたつと忘れてしまうんじゃないか」という心配は、ちょっと違うのではないかと思います。習ったときは覚えているのだから、そのまま覚え続けていれば志望校判定模試でも点が取れるのかというと、決してそんなことはありません。
 
実は「習ったことをそのまま再現できる」だけでは、大きな実力テストで点を取ることは難しいのです。その理由は、大きな実力テストで出題される問題が、普段の授業で習っている問題よりも、ずっと実戦的だからです。実戦的というのは、簡単に言ってしまえば「一筋縄ではいかない」ということです。もうちょっと詳しくいえば、「この問題の解き方は?」と聞かれて覚えていることを答えられる力を持っているとすれば、そこからもう一歩踏み込んで、「●●ということを学んだけれど、そこから考えるとこの問題の考え方は■■なんじゃないか」と考えを膨らませ、発展させ、推測する力、つまり「応用力」を身につけているかということを求められる問題ということになります。
 
では、そんな「実戦的」な問題に対応できるようになるには、どのような学習をすればいいのでしょうか。
 

■「考える」勉強をしているか

 
まず何より大切なのが、「考える」ということです。「考える」なんて、勉強するんだから当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。でも実際に「考えるチカラをつける勉強をしてください。」と言われると、一体どんな勉強をすればいいのか見当がつかないかもしれませんね。
 
「考える力」を育てるもととなるのは「行動」であり「習慣」です。塾の宿題をやっているから、この子は今考えているはず、と思っていたら、実際には必ずしもそうだとは限りません。習ったことに機械的に当てはめて「作業」していることだってあるのです。塾の宿題演習では、むしろそうした「作業時間」の方が多いと考えていいでしょう。そうなるとせっかくの長時間の学習も、大部分は大きな効果を生み出すものになっていないということになります。
 
では、お子さんが実際に考えながら宿題をやっているのかを確認したい、しっかり考えながら宿題をさせたいという場合、どうすればいいのでしょう?
 

■家庭内ミニ授業で「考える勉強」を

 
このことに関して私がよくご家庭におすすめするのは「家庭内ミニ授業」です。簡単にいえば、お子さんに講師になってもらい、お母さん、お父さんは「できの悪い生徒」としてお子さんに解き方を教えてもらうのです。
 
「どうしてそんな解き方になるの?」この質問を、親の立場からお子さんに投げかけると、ともすれば「詰問」になってしまいがちです。でも「難しそうなことやってるわね。お母さんにも教えてよ。」というスタンスで、お子さんを「先生」にして教えてもらう立場から言えば、お子さんも悪い気がしないでしょう。
 
「わからないの?しかたがないな・・・」といった感じで教えてくれるかもしれませんね。
 
さて、いざ誰かにわかるように解説しようとすると、意外に自分が理解できていなかったことに気づいたり、あらためて「あ、そうだったのか。」といった発見があるものです。
 
こうやって、作業だけに陥ることなく「考える」という場面を毎週の宿題演習の中に取り入れていくことが、思考力を育てて「実戦問題」への対応力をつける素地となっていきます。ちょっと遠回りのようですが、付け焼き刃の対策を繰り返すよりずっと確実な効果があります。
 
秋の夜長、「家庭内ミニ授業」を一度試してみてください。