前回は、御三家などの難関校に合格するために必要な概略をお話ししました。
今回は、話しをもっと絞って、「麻布の6番が解ける子にする」方法を考えてみたいと思います。
今回の首都圏の入試問題の中で、この麻布の算数6番は出色の出来だと感じています。
(1)で60°回転させて正三角形に気づかせる。
(2)で、垂直に気づかせて、
(3)で、「線対称な図形の対応する点は、対称の軸によって垂直に2等分される」ことから、(2)の結果が使えることに気づかせる。
(4)は、ここまでついてこられた子どもへのご褒美のように、解きやすい問題でした。
図は、毎年麻布に用いられる正三角形の模様です。
この問題の第1関門は、(1)を解く時に、目盛りを正確に数えて長さを合わせ、
その上で60°の角度を正三角形の模様を利用して判断することです。
目分量でそれらしい場所に点をとってしまった子は、その先に進めなかったのではないでしょうか。
第2関門は、(3)の問題文を読みながら、(2)の垂直を頭の片隅におきながら、
「線対称な図形の対応する点は、対称の軸によって垂直に2等分される」ことに思いをはせることです。
「もしかしたら、(2)の垂直という答えは、この問題のために親切心で作ってくれたんじゃ」
と感じることが出来た子の半数ぐらいは、
「もしかしたら、(3)の図が(2)の図の中に書き込めるんじゃないだろうか」
と次に進むことが出来たのではないでしょうか。
そうすると、この6番を解くための能力は、「もしかしたら○○」と気付くことが出来ること、
その予測に基づいて書くことが出来る力だということになります。
仮説を立てて、それに基づいて試行錯誤できる力だとも言えます。
もしかしたら・・と気づくためには、線対称の性質が頭の中に利用可能な形で収納されている必要があります。
そして、丁寧で正確な作図力も必要でした。
御三家を中心に最上位校では、公式や裏技一発では解くことが出来ずに、
仮説に基づいて試行錯誤するタイプの問題が多く出題されます。それが解けることが合否を決めます。
条件反射的に素早く問題を解く力ではなくて、ゆっくりと集中力を保ったままで思考をつないでいく力が必要なのです。
少し前に読んだ、「知の逆転」(ジェームズ・ワトソン他 NHK出版新書)という本の中に、
「ゆっくりさが考えを洗練させる」という一節(164ページ)がありました。
これは、ネット社会の功罪についての記述だったのですが、
受験勉強についても同じことが言えるんだなと感じました。
多くの公式や解き方に精通し、それを素早く取り出す条件反射の練習だけではなくて、
気持ちの余裕を持って、ゆっくりと試行錯誤する学習も取り入れてください。