今回は、子供の特性と暗記についてお話ししたいと思います。

人には、5感が備わっています。視覚・味覚・聴覚・触覚・嗅覚。

このうち特に学習に関係が深い3つの感覚、視覚・聴覚・体感覚について考えてみたいと思います。

この3つの感覚は、人によって強弱が異なっているようなのです。

 

たとえば、「速く動く」ことを想像した場合、ある人は流れる景色を想像します。

また、別の人は、耳元を通り過ぎる風の音をイメージし、また別の人は顔に当たる風の気持ちよさを感じます。

「A君はB君の2倍の速さで・・・・」という問題があったとして、子供達は語句の意味だけでは無く、その状況を想像することによって、

A君の方が速く目的地に着くことを当然のこととして感じることが出来ます。

同じ問題文を読んでも、一人一人の子供が感じていることが違うのです。ここに覚えさせ方の難しさがあります。

そして、もう一つ考えておくべきだと思うのは、覚えるべき知識はほとんどの場合言語を媒体としています。

イメージだけを覚えていても目の前のテストでは利用できません。

 

問題文を読んで、題意を理解する一連の頭の動きを想像して見ると、不思議なことがたくさんあります。

まず、文字を画像情報として取り入れ(視覚)、その残像が消えないうちに文字としてとらえ、その次に文字の意味をとらえます。

 

また、授業を聞いている子供の頭の働きを想像しても同様です。

先生の話は、まず音として大脳に運ばれます(聴覚)。この段階では言語音声はまだ音楽と同じです。

言葉がわからない外国の音楽を聴いているのと同じだと考えておけばよいと思います。

その音声情報から、単語の音素を見つけ出し、日本語の語順に従って文章を作ります。その後に意味を理解することになります。

 

「問題文を読まないから、そんな間違いをするんだ!」とか、「ちゃんと授業を聞いていないから理解できないんだ!」

と叱ってみても、当の子供達は、「問題文は読んでいるよ!」「授業はちゃんと聞いているよ!」と思っています。

でも、子供達の「問題文は読んでいるよ!」は、問題文は見た、画像情報としては隅から隅まで取り入れた、

このことで「読んだ」つもりになっていますし、「ちゃんと聞いているよ!」は、音声情報は耳からちゃんと入っているよ、

聞き漏らしていないよ、このように思っています。

 

画像情報や音声情報から、意味情報として言葉を駆使してとらえることがポイントになります。

ここで必要になってくるのは、「内語」です。意味を理解したり試行したりする際に、自分の頭の中で使う言葉です。

この内語が発達してくると、意味のとらえ間違いが少なくなりますし、深く理解することが出来るようになります。

 

記憶においても、思考においても、まず感覚器からの信号をより鮮明に短期記憶する力を鍛え、

次に内語を用いて自分なりの意味情報に翻訳する力を鍛えることが大切です。

 

お子さんの暗記力が今一歩と思われているなら、その原因が視覚や聴覚の問題なのか、内語の問題なのか、

それとも両方の問題なのかを判断する必要があります。

そして、その対策は、お子さん一人一人の発達段階や目標に応じて考えていくことになります。

 

そして、この次に考えることが、前回お話をした覚えるテクニックになっていきます。

 

・7月3日の朝日新聞朝刊に私(西村)のコメントが掲載されました。

34面の「中学受験塾 入り乱れる」の最後の方に入っています。興味のある方は読んでみてくださいね。

朝日の記者さんといろいろとお話をさせていただいて、教育や学習について非常に真剣に考えていらっしゃることが分かりました。