お父さんは家庭でリーダー役を務めていることが多いため、お子さんの受験でもリーダーを務めることになりがちです。
父性は原理・原則を強く押し出すのに向いていますので、受験の大きな方針を決める際にリーダーシップを発揮なさることはとても賢明な選択です。
ですが、日々の細々とした勉強にまでチェックを入れていく管理者には、できるだけならない選択をお勧めします。
お子さんとの時間を十分に共有できるお父さんはごく少数だからです。
職場であれば一日のうちのかなりの時間を過ごしていますから、スタッフの事情もよく見えており、状況に応じた的確な判断を行うことができるでしょう。
しかしご家庭でのことがどれほど見えているでしょうか。
実際には、お母さんからの情報をもとに判断するしかないことの方が多いのではないでしょうか。
大きな流れは見えても、日常的な小さなことがらまでは見えない。
でもお子さんの受験勉強については、日々の小さなことがらをいかにくみ上げ、適切にマネージメントしていくかが重要なのです。
ですからお父さんが受験の管理者を務めようと思えば、仕事が終わった後はすぐに帰宅し、使える限りの時間を使ってその日のお子さんの様子を確認し、フォローしていくことが必要になります。
中にはそれを全うなさるスーパーパパもいらっしゃいますが、多くの場合は難しい選択だと思います。
かといって、お父さんがお子さんの受験について関わりを持つことをやめるというわけにもいきませんよね。
「週末ぐらい手伝ってよと思うのですが、夫はゴルフの方が大切らしく・・・平日は仕事で大変だとは分かるのですが、せめて週末ぐらい一緒に子供の受験に向き合ってもらいたいと思うんです。求めすぎなんでしょうか。」(早稲田アカデミー 小6女子N.M.さん母)
とお話になる時のお母さんは、たいてい溜息まじりです。
お子さんの中学受験は、家族総出の一大プロジェクトです。
そのプロジェクトにお父さんが参加しないということは、
○お父さんはお子さんに関心を持っていない
○お父さんは奥さんをはじめとしてご家族に関心を持っていない
この二つのメッセージを発しているに等しいのです。
ご家族の中では、それでもバランスを保つことができるのかもしれません。
しかし、お子さんの受験勉強に並走する中で、お母さんはよそのご家族の様子を見ることになります。見たくなくても見えてしまいます。
「○○さんちは旦那さんが、いつも支えてらっしゃる。それにひきかえ、うちは・・・なんで私一人ががんばっているんだろう」
思いたくなくても、そう思ってしまうのです。
なぜなら中学受験は大変だから。
ティーチャーとしてお子さんを支えてらっしゃるお父さんも多いですね。
理数系はお父さんの担当、文系科目はお母さんの担当と分けているというお話もよくうかがいます。
ご家庭で勉強のフォローが受けられるというのが、お子さんにとって有利なのは間違いありません。可能であればぜひ勉強を手伝ってあげてください。
ただし、その際にはご自身ができることとできないことを冷静に把握しましょう。
「算数と理科は主人が担当して、国語は私が担当しています。ただ、特訓講座の算数はかなり難しいらしくて、『そろそろお手上げだぞ』と主人も言い出
しているんです。数学でなら教えられるそうなのですが、算数のやり方でないとまずいですよね。」(日能研 小5女子K.S.さん母)
お父さんが冷静だと、家庭にどっしりとした安心感が与えられますね。
ということで、受験を成功させてきたお父さん方は、時にティーチャーになりながらも、結果として支援者の立場に立ってらっしゃいました。
「夫は勉強には口を出さないようにしてくれているんです。子供の遊び相手になってくれて、息が詰まらないようにうまくやってくれています。」(浜学園 小5女子H.R.さん母)
「子供の宿題をずっと私がついて見てきたのですが、5年生になって内容も難しくなってきたのと、子供が反抗期に入ったことで最近は子供との関係が悪
くなってしまっています。毎日言い合いになっているのを主人が見かねて、こちらに相談するよう勧めてくれたんです。『今のままじゃ、君がもたないで
しょ』って言ってくれて。ああ、見てくれているんだなぁと感じました。」(希学園 小5男子K.Kくん母)
「お父さんはテストの点数を聞いて来ないから好きやねん。いつも『自分の勉強に納得できているなら、それで良し』って言ってくんねんけど、そう言われたら、ちゃんとやらなあかんなって思う。」(日能研灘特 小6男子S.Y.くん)
お子さんの受験を成功に導く支援者の立場こそが、優れたリーダーシップの証です。
プロセスに気を配りましょう。仕事から帰ってきて、たまたま見かけた様子だけから判断して口をはさまないように。お母さんと子供の努力に気を配ることが大切です。
そして、聴くことを大切になさってください。
ただ話の内容を「聞く」のではなく、気持ちも含めて「聴く」。
お子さんの受験に付き合うとき、お母さんは冷静ではいられません。お子さんはまさに自分の血を分けた分身です。お父さんがお子さんと出会う10か月も前から、お母さんはお子さんとずっと一緒に過ごしていたのですから。
ですから、お父さんが冷静であることが大切です。
お父さんまで冷静さを失えば、家庭が不安定になってしまいます。
子供の勉強がうまくいけばお母さんのおかげ、勉強がうまくいかなければ自分の責任、ぐらいの姿勢でいられれば最高のパパです。
言うことをころころ変えない。
方針を一貫させる。
そして、ぜひビジネススキルを応用なさってください。
ビジネスの現場でお父さんが身につけてこられた、スキルは受験にも子育てにも応用できる貴重な財産です。
○コーチングスキル
○スケジューリングのノウハウ
○報・連・相
○PDCA
なにより、部下育成における失敗経験、取り引き先との付き合いでの失敗、同僚との軋轢、などご自身の失敗経験を活用しましょう。
よくある子供が反発するケースとして、お父さんが自分の子供時代と比べ、「お前はこんな問題もできないのか!」と責めるケースがあります。
経験に裏打ちされた責めは非の打ち所がなく、正論ですから、子供にとっては逃げ場がない。
となると、子供は反発するしかしようがなくなります。「お父さんはお父さん。僕は僕なんだ!」なんて爆発すると、勉強どころではなくなります。
そうなると、「ウチは反抗期だから・・・」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは反抗期ではなく、「反発」。
ちょっと注意を払って入れば引き起こさなくてすんだ反発を、親が与えてしまっているということなのです。
親の自慢は子供には嫌みに聞こえます。決して叱咤激励にはなりません。
いくらお父さんが貴重な受験経験を持っていらっしゃっても、そのあたりの対応を間違うと、厳しくなります。
子供たちには、自慢よりも失敗談の方が断然ひびくということを知っておいてください。
リーダーのあり方については、こんな言葉があります。
「最低のリーダーは指示をする。
普通のリーダーは説明する。
優れたリーダーは率先垂範、背中で語る。
最上のリーダーはやる気に火をつける。」
世のパパには、ぜひ最上のリーダーとしてお子さんの中学受験を成功に導いてもらいたいと願っています。
がんばりましょう!
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