お母さんの役割は2つあります。

1つめは勉強のスケジュール管理です。

受験は時間との勝負になります。

お子さんに時間の管理までさせてしまっては勉強する時間が足りなくなります。
また、時間の管理は自然にできるようになるわけではありません。
もちろんこれから経験をつめば身についていくでしょうが、受験の日までにお子さんが自然と身につける可能性は低いと考えておく方が賢明です。

今のうちにお子さんに合った時間の管理の方法をあなたが把握しておけば、お子さんが中学に入った後で時間の管理方法を教えてあげることができるようになります。

勉強はお子さんが、時間の管理はお母さんというようにお互いの作業領域を決めてしまうことが時間を効率よく、またお子さんの弱点を埋めるための時間を捻出することにつながります。

何より、今の中学受験は熾烈です。
中学受験を目指すお子さんの数は年々増加しています。

お子さんが行きたいと考える中学校には、他のお子さんも殺到するのです。
公立中学への進学も視野に入っているのであれば話は別ですが、どうしても私立・国立への進学を希望なさっているのであれば、「受験対象校は志望校の一校だけ」というわけにはいきません。少ない方で3校、多い方では6?10校も受験することになります。
当然、それぞれの学校について入試の分析と対策をとっていく必要があります。
とても小学生が自分で分析処理できるレベルではありません。

「自分が受験の時は、親にここまで頼っていなかったのに…」と思ってらっしゃるかもしれません。

いずれにしても、どこかのどかだった昔の中学受験と今とでは事情が全く異なります。
今の中学受験勉強は、親が手伝うべきものです。

また、お子さんの同級生には、自分でちゃんと出来る「○○くん」や「□□さん」がいるかもしれません。それは、「○○くん」「□□さん」だからです。

よそはよそ、うちはうちです。

 

2つめは、お子さんへの言葉かけです。

でも、やる気を出して何でも自分で進んでするようになる魔法についてお話しするのではありません。

思うように行かなかった時にどのように言葉をかけるのが大事かという話です

まず、どんな状態の時に子供たちはバリバリ勉強に打ち込めるのでしょう?
それは、自信がある時です。
「がんばったら結果がついてくる。」
「昨日もうまくいったから、今日もきっとうまくいく。」
「あと少し復習したらこの単元はばっちり。」
お子さん自身がこのような実感を持って勉強できていれば、親があれこれ口を出さなくても、やる気にあふれているものです。

逆に、がんばったらできるようになるという「実体験」をお子さんが持っていない時は、いくら周りの大人が諭したとしても、「今がんばったら、この先にいいことが待っている」という気分に子供はなれません。
むしろ「またうまくいかないのではないか。」という不安でいっぱいなのです。

ですから、お子さんが思うように成績が出なかったり、勉強できなかったりする時には、お子さんも不安を抱えているのだということを意識して声かけしていくことが大切です。

お子さんが「また失敗した。きっともう無理なんだ。」と落ち込んでいる時には、
「本当にいつもうまくいかないの?」と聞いてみてください。
落ち着いた声で。

今回は失敗したかもしれませんが、これまで常に失敗し続けてきたわけではないでしょう。

小さなことも含めれば、むしろうまくいっていたことの方が多いはずです。
その時のことを思い出す。

うまくやれていたのはなぜ?

うまくいくための秘訣がきっとあったのです。
それを見つけてあげましょう。

お子さんをほめることでやる気を出させたいと思ったら
「お子さん自身が自分をほめていること」について、ほめてあげてください。
テストの数字だけを見てほめても効果はありません。
前回のテストで偏差値48だった子が、今回のテストで偏差値50になったとしましょう。
お子さんが自分の納得できる基準を偏差値55においているとすれば、今回の結果についてあまり喜んでいないかもしれません。
その時、「やったね!成績アップしたね!」と無条件に褒めてしまえば、お子さんにとっては「なんだ、この程度でほめてもらえるんだ。」と基準を55から50に下げてしまうことでしょう。
これでは逆効果ですね。

本人が手ごたえを感じているのかどうか、喜んでいるのかどうかをよく観察しましょう。

お子さんをよく観察していれば、偏差値50という数字にあまり喜んでいないことはすぐ分かると思います。

「本当はどれぐらい取りたかったの?そう55取りたかったのね。じゃぁ、『やった!』という感じではないよね。でも、前回より上がったということは嬉しいことよね。この調子で、次こそは目標の偏差値55をとれるようにがんばってみようね。」
といった形で、部分を褒めるようにすれば、お子さんもやる気が出てくるものです。
その際、「前回より上がったのは、どんなことをがんばったからかな?」
「次はさらにどんなことをがんばろうと思うの?」という風に声をかけることができれば、ばっちりですね。

親からみたらほんの少しの変化でも、本人にとってはとても嬉しい「成績向上」の場合だってあります。
たとえばお子さんにとって偏差値50の壁がとても大きな壁だったとすれば、偏差値48が50に上がったことは大ニュースでしょう。
でも親としたら手放しでほめてしまいたくない。

この子の力はこんなものではないから、ここで満足してしまってほしくない。

そんな時は、「良かったね!」と言ってあげましょう。
数字が大きくないのであれば「すごいね」「よくがんばったね」はちょっと違いますよね。

それは、「すごいね」「よくがんばったね」は評価する言葉だからです。
「(お父さんが思うには、この結果は)すごいね」
「(お母さんが思うには、この結果は)よくがんばったね」となっているのです。
こういう表現を使ってしまうと、お子さんは素直に
「親が喜んでくれている=これで十分なんだ」と間違ったメッセージを受け取ってしまいます。

「良かったね」なら、本人自身が喜んでいることを認めてもらえたことになるので、やる気につながるのです。「(あなたが嬉しいと思えたことが)良かったね」というメッセージなのですね。

また、時には、率直な言葉で期待を伝えてあげることが必要です。
その際もお子さんの一つ一つの部分を具体的に褒めること。

「○○はノートを丁寧に書いているところがいいと思うな。それに、テストが返ってきたら間違えたところをすぐに見直して、次はできるようになろうと
がんばっているところも評価しているよ。だから、テストで偏差値54が取れるようになるのも、あと少しのがんばりで大丈夫だと思っているんだよ。どうか
な?自分でもあと少しがんばったらいけそうと思っているんじゃない?」

ただ結果を期待するだけでは、子供にとっては「もし結果が悪かったらどうしよう」というプレッシャーの方が先にたってしまいます。

でも、親から自分の部分を認めてもらえれば、それが力になる。自信になる。なによりうれしいです。

「やる気を引き出す」とは、
子ども自身に、「自分の中に自信を持つことができる部分があるんだ」と気付かせてあげることなのです。