生活の延長線上での受験
中学受験は親子の受験といわれるように、受験の成否はご家庭にあるといっても過言ではありません。
言い換えると、中学受験は「家庭生活の延長線上にある」といえるのです。
ですから、中学受験をする理由をはっきりさせておくことは非常に重要です。
お母さん、お父さんそれぞれが自分の考えを持っているだけでは足りません。
必ず、十分に話し合って、夫婦を始め、家庭内の意見を一致させておくことが重要です。
■公立中への進学はどうしても避けたい。
■自分が通っていた中学校に子供も通わせたい。
■とても気に入った学校がある。それ以外の学校には行かせたくない。
■将来の大学進学のために、国公立大学への進学実績が良い学校に入学させた
い。
■子供の個性を伸ばしてくれそうな環境を選びたい。
■お友達がみんな受験をするのにうちの子だけ公立というのはかわいそう。
■制服がかわいい。
受験をする理由は人それぞれ色々とあるものです。
聞いてみたら思ってもみない理由が出てきたりもしますから、「家族は自分と同じ思いのはずだ」と思い込んでしまわず、早めに話し合っておくことを強くお勧めします。
一番問題が起きやすいのは、お母さんが中学受験を決めたものの、お父さんは受験に反対、またはその逆のパターン、といったご家庭です。
中学受験は子供に一定の負荷をかけていくことになります。
真剣に中学受験に取り組むとなれば、負荷をかける親も負荷をかけられる子供も、そのせめぎあいは激しくなります。
その時に夫婦で意見が違う家庭では、お子さんが勉強に嫌気がさすと、受験反対派のお父さんと遊びに行ったりするということが起きます。
夫婦で考えた上での息抜きならいいのですが…
それが、大切なテストの前などだったらもう大変です。
「明日は大切なテストだっていうのに、どうして遊びになんか連れていくのよ!」
「テストテストって、たまには息抜きも必要だろう!だいたいそんなに大切なテストなら、あいつががんばって受けようと思えるように、やる気にさせたらどうなんだ!」
「なによ、何にも知らないくせに!だいたいあなたはいつもそうなのよ!・・・・」
というやり取りが現実に起きるのです。
この話はご夫婦に限りません。
おじいちゃんやおばあちゃんが、「そこまでやらなくてもいいんじゃない…」などとおっしゃることもしばしばあります。
同居していなくても、近くにおじいちゃんおばあちゃんが住んでらっしゃって、お子さんが遊びに行った際に、「そこまでしなくてもねえ・・・」なんて本人に声がかかることもあります。
お子さんの受験をきっかけに、嫁しゅうとめの問題がクローズアップされてくるということも、珍しくはありません。
こうした家庭内で意見が不一致の家庭は、受験には不利な環境です。
子供を本気に頑張らせたいと思うのであれば、家庭の意見を一致させた上で受験に臨みましょう。
どうしてこういうことを申し上げているのかというと、子供は、楽な方に流れていくものだからです。
ちゃんと頑張れる子ですら、わざわざ勉強なんてする必要ないよという意見に流されてしまうものです。
中学受験においては、もうひと息、もう一歩の勉強で成果がぜんぜん違ってきたりしますから、そのもう一歩のところで楽な道をささやかれたら、やっぱり子供はそっちに流されてしまうのです。
だからといって、両親がともにガミガミ言えということではありません。
お母さんがガミガミ係、お父さんが息抜き係といった役割分担をするのです。
中学受験ではそういったことまであらかじめ考えておくべきなのです。
子供に大きな負荷をかけていく以上、親は家庭内でのバランスをともに真剣に考える必要があります。
子供ばかりががんばればいいのではありません。
親の強力なバックアップ体制が必要なのです。
中学受験 家庭の役割
中学受験で最も大切なのは、ご家庭の役割です。
そして、その役割は2つあります。
1つめは、スケジュール管理。
2つめは、役割分担です。
スケジュール管理の重要性
忙しい毎日の中、塾の送り迎えやお弁当作りなど、お子さんのためにしてあげることは本当にたくさんあります。
また、成績を上げるという一点に限っていうと、お父さんやお母さんが横について、勉強を教えてあげているイメージが強いのではないでしょうか?
しかしながら、勉強を見ることはお父さんお母さんの果たす最も大事な役割ではありません。
お父さんお母さんの果たす最大の役割。
それは『確認と指示』です。
例えば、お子さんは塾で受けている授業を本当に理解していらっしゃいますか?
理解しているかどうかをどのようにして確認していらっしゃいますか?
お子さんが本当に授業を理解しているかどうかを確認する方法はたったひとつ。
授業を受けてからできるだけ早いうちに、授業で取り扱われた問題を自分で解くということです。
こうすることによって、授業を自分の中で思いだし、「あ?、こんなこと言ってたな。」という具合に再現することができるようになります。
人間の記憶は、24時間でその75%が失われるといいます。
忘れないうちにできるだけ早く習ったことを自分のものにすること。
これが復習です。
言い換えると、「わかった」を「できる」に変え、自分で「できないところがどこか」を見つけることともいえるでしょう。
お父さんお母さんが授業ノートと宿題ノートを照らし合わせて、お子さんができているところとできていないところを「確認」する。
こうすることによって、その授業で教えてもらったことの中で、今週お子さんが何に力を入れなければならないのかがはっきりするのです。
できなかったところは、授業ノートを見ながら再チャレンジさせる。
宿題の中には、授業で取り扱った問題の類題が多く含まれているので、できなかった問題の類題から取り組ませる。
もうおわかりですね?
お父さんお母さんの仕事は勉強そのものを教えることではなくて、この復習のやり方を「指示」することです。
もちろん、お子さんが授業ノートを見てもできない場合は、お父さんお母さんが教えてあげてもよいでしょう。
ただし、その場合は授業ノートをしっかりと勉強して、塾のやり方にあわせてあげるようにして下さい。
解き方や考え方が違うと、お子さんが混乱してしまいます。
塾に通わせている限りは、解き方や考え方もできる限り塾にあわせていくことが重要なのです。
マニュアルには、お父さんお母さんが具体的にどのように「確認」し、「指示」すればよいのかということが詳しく書かれています。
この「確認」と「指示」を繰り返しているうちに、お子さんは自然に「勉強のやり方」身につけていくことになります。
中学受験に天賦の才は必要ありません。
同じ塾で、同じカリキュラムで、同じ授業を受けても伸び方に差があるのは、お子さんが勉強のやり方を身につけていないからです。
勉強のやり方を身につけることで、無駄な苦労をせずに成績をあげる方法が身につくことになるのです。
役割分担について
少し前までは、「中学受験は母親と子供の二人三脚」と言われました。
ですが、中学受験が苛烈さを増す一方の首都圏・関西圏では、「中学受験は父母と子供の三人四脚」が普通になってきています。
資金面で祖父母がスポンサーになっているケースも多く、家族総出の受験といっても過言ではありません。
受験事情がこうなってくると、お父さんがどのように受験に関わるかがとても重要です。
ご夫婦で役割分担がうまく成り立っているご家庭では、お母さんの言葉にお父さんへの信頼があふれています。
しかしながら、実際にお話を伺っていると、事情はちょっと違っているようです。
「本当は夫にも手伝ってほしいのですが、仕事が忙しくて家にいないので、落ち着いて相談もできない状態で・・・子供の受験のことは私に任されているんです。」(SAPIX 小6男子A.R.くん母)
と、ちょっぴり恨めしそうにおっしゃるお母さんもいらっしゃいます。
オブラートに包んでも仕方がないですね。
恨めしそうにおっしゃるお母さんの方が確実に多いのです。
このままいくと深刻な方向に向かってしまうのでは!?と心配になるお話もよくあります。
「主人も中学受験をしたのですが、塾なんかに通わなくても合格できたというのです。息子も主人の出身校を目指しているのですが、なかなか成績が上がらなく
て・・・毎日塾に通っているのに模試でA判定が出ないのは理解できないと、主人は言うんです。私の育て方が悪いからと責められているみたいで。」(希学園
小6男子T.Kくん母)
ご自身の受験経験を下敷きに、お子さんの受験も全く同じように考えるお父さん・・・
このタイプのお父さんについては、お母さんの悩みはつきません。
「父親は日頃は子供の勉強を見ないのですが、たまにテストの結果を見て、子供をひどく叱るんです。その日の気分で怒ったりするので、子供も父親に成績を見
せるのをいやがっていて。私と子供が2人でいるときはいいのですが、主人が帰ってくるとどうも家の中の雰囲気が悪くなってしまって。早く受験が終わってく
れないかと思います。」(浜学園 小6男子O.S.くん母)
などと、まだ夏休みが終わったばかりなのに、すでにお母さんもお子さんも受験へのモチベーションを失ってしまったおうちもありました。
お酒を飲んで帰ってきた日に限って、お子さんのテストをチェックしたがるお父さん。
お子さんにやる気を出してもらおうと、ご自身の受験体験を話しているうちにいつの間にか自分の自慢話になってしまうお父さん。
自分が本屋で見つけてきた問題集を使わせたくて、塾のカリキュラム度外視でお子さんの勉強メニューを変えてしまったお父さん。
「第一志望校の学校以外は受験してはいけない。失敗したら公立中学校に進学!」と鶴の一声で決定したにも関わらず、いざ入試が始まったら「やっぱり私立に行かせてやりたいから、他にもいくつか受験させたらどうだ?」と、願書受理期間終了後に言い始めたお父さん。
これは全部実話です。
残念ながら、全員の方が受験に失敗なさいました。
そうならないために、一番最初にお父さん・お母さんがそれぞれの果たすべき役割をきちんと決めておかなければなりません。
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