ケーズスタディー(2)

「なぜ勉強机はいらないのか。」のヒント

 

T君のお母さんからのお話です。


「勉強部屋でちゃんと塾の宿題をやっているはずだと思っていたのに、飲み物を持って行った時に何かをバサッと隠す音がしたもので、「何を隠したの」と問い詰めたところ、漫画を読んでいたと白状したのです。

 

道理で長い時間勉強している割には成績が伸びないはずです。先生からうちの子に「ちゃんとやるように」言ってもらえませんか。」

 

よく耳にする話です。

 

成績のよい子、順調に成績を伸ばしている子のほとんどは自分の勉強部屋ではやっていないのです。

 

どこで勉強しているかと言えば、ほとんどダイニングテーブルで勉強をしているのです。


ダイニングテーブルでは、包丁を使う「トントントン」という規則正しいリズムが聞こえます。

 

お鍋のぐつぐつと煮える音も聞こえます。

 

お母さんが台所を歩く音も聞こえてきます。

 

お母さんの動きによって、電灯の影も目の端を横切ります。

 

そして、今日のお母さんは機嫌が良いのかそうでないのかも、音の響きのかすかな違いから感じ取ります。

 

それじゃあ、集中できないじゃないかと思われるかもしれませんが、それが人の脳の不思議さです。

 

心地良い自然の音が耳から入ってくる方が脳の働きは活発になります。


このような時に、お母さんから、
「勉強頑張っているわね。お母さんも頑張っておいしい食事を作るからね。」
と言ってもらった子供の気持ちはどうなるでしょうか。

 

無理なく、それこそ自然に、頑張って目の前の問題に取り組もうと思うものです。


このような、会話の周辺にある種々雑多なものもコミュニケーションの要素になります。

 

大人もそうですが、子供はより感情の生き物だと思います。

 

勉強しなければという義務感だけではなかなか行動できないものです。

 

ちょっと勉強してみようかなとか、勉強したいと感じたときにはすぐに勉強に取りかかります。

 

そしてこのときの勉強は学習効果が高いのです。

 

しかも、やっかいなことに、「ちょっと勉強してみようかな」という気持ちは意識の部分で感じるというよりも無意識の部分で、本人の意識が関わらない部分で、いつの間にか感情が動いています。

 

顕在意識にではなく潜在意識に直接働きかけるものです。

 

学習においては、
  1 環境音
  2 色彩
  3 人の表情
  4 声の大きさや語調
  5 スキンシップ


が影響の強いものといえます。

 

 

子供は、親御さんの言葉を、それを包んでいる語調や表情と共に受け取ります。

 

明るい表情や穏やかな語調に包まれた言葉はお子さんの心に届きやすいのです。

 

お子さんを叱咤激励したり、励ましたりするときには、「もし自分がそのように言われたらちゃんとそうするだろうか。」をほんの一瞬考えてから行動されることをおすすめします。