■2020年の大学入試改革
主任相談員を務めさせていただいている、中学受験ポータルサイト「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」に掲載される、2020年の大学入試改革に関する記事に協力しました。
大宇入試改革、2015年1月にアナウンスされた通りには、なかなか進んでいないところもあるようですが、目指している方向は「社会に出て困らない、生きていく力」を子どもたちにつけさせることだと思います。
高校在学中に行われる全国統一のテストが「レベルは合わせるが全国統一ではない」というものになったり、現在のセンター入試にあたるテストが当面、理想通りの物にならないようだとか、マイナス面のニュースもあります。しかし、知識偏重から思考力や判断力、表現力を重視した選抜方法に変えたいという意図は、今の子どもたちが将来、社会に出たとき求められるものに近いと思います。
この改革のそもそもの目的は「知識偏重」の今の制度を変えるというものですが、中学受験にも同じような批判と変化の波はあります。
■中学受験の勉強は「詰め込み」か
中学受験の勉強は「詰め込み」だという意見があります。確かに、詰め込みと言われてもしかたがないような量の宿題を出す塾もあります。塾の課題は取捨選択するものだ、ということを知らずに、ひたすら次の週までに宿題を終わらせるのが目的のような勉強になってしまうご家庭もあるでしょう。
しかし、実はできる子ほど「詰め込み」の学習でやってきていないものです。世間で言われる「詰め込み」とは、私が言う「大量暗記型の学習」だと思うのですが、このやり方には限界があるのです。
中学受験を経験し、いわゆる難関校にお子さんを合格させた、多くのご家庭のお母さんに聞くと「5年生がいちばん大変だった」とみんな仰います。6年生ではなく、5年生なのです。実際には6年生の勉強のほうが内容のレベルも高く、量も多いはずなのですが、「5年生がいちばん大変だった」なのです。
このことと、「詰め込み」学習の限界の話には深い関係があります。
■「5年生がいちばん大変だった」と思い返せる子に
「5年生がいちばん大変だった」と仰ったご家庭は、お子さんが5年生のときに学習の質を変えることに成功したということです。だから6年生は、楽ではないにせよ順調に勉強が回っていったということです。
4年生までは、実は「詰め込み」でもお子さんには余裕があるのです。内容も易しく、量も少ないから、出てきた解法を全部覚えるような勉強でもテストで点は取れるし、上位クラスにも入れます。
でも5年生になるとそうはいきません。学習内容はぐんと難しくなり、量も多くなります。解き方レベルで覚えようとすると、すべての問題を処理することができなくなります。
「この問題は今まで習った問題のどれに似ているか」
「似た問題は似た解法で解けるはず」
「まずは見やすく、考えやすく整理しなくちゃ」
5年生の「壁」を乗り越える子は、こんなことを自問自答しながら問題を解いているものです。その問題の、唯一無二の「解き方」を覚えるのが大切なのではなく、どうすれば糸口が見つかりそうか、これまで習った知識の何と何を組み合わせれば、この問題が解けるか。そんな「試行錯誤」が上手にできるようになった子が、「後で思い出してみると、5年生になった時がいちばん大変だったな」と思い返せるのです。
キーワードは「どうしてこの解き方で解くのか」を考えるということです。「解き方」そのものを覚えるのではなく、どうしてその解き方なのかを考え、納得した上で解くということ。似ていますが、まったく違うことです。
お子さんが5年生になって2ヶ月余を過ごしたなら、そうした勉強のしかたになっているか、ちょっと意識して見てあげてください。
変化がまだなら、変わるチャンスです。