前回は、図形問題を解く上で知識を覚えておくことが大切だと話しました。
今回は、それを覚えやすくする方法です。
それは、「なぜ」を知ることなのです。
定義には「なぜ」はありません。
二組の対辺が平行な四角形は平行四辺形だ。これが定義ですが、これは証明できません。だってそう決めたんですから。
ところが、定理や公理や公式には「なぜ」が必ずあります。それを知ることで忘れにくくなるのです。
たとえば、「N角形の内角の和」と「対角線の本数」は、それぞれ180×(N-2)、
N×(N-3)÷2となります。この括弧の中の数字をなかなか覚えてくれないのですが、
1つの頂点から引ける対角線は、その点自体に向けて対角線が引けないし両脇の点にも引けないよね、
だからN-3本だよね。こう説明して、なるほどと感じることができた子は忘れないのです。
逆に、公式の丸暗記の子は1週間もすると見事に忘れます。
そして、もう少し欲張ったことを言えば、子供の直感に合う説明をしてあげればより忘れにくくなります。
たとえば、「N角形の外角の和は360°」の説明において、
180°N個分から、N角形の内角を引いたものだから
180×N-180×(N-2)=180×2=360になるでしょ。
こう説明してもなかなか、「なるほど!」とはなりません。
紙に多角形を書きながら、外角を作る外に向かう線を長く引いて、
「この図を遠くから見ると」
と言いながら、小さめの図を書き、
「もっともっともっと遠くから見ると」
と言いながら、小さな点を打ち
「これが○角形だ。その外に○本の線が出てるよね。」
と言いながら線を引き、
「そうすると外角の合計は?」
こう説明すると、子供の表情が変わり、「な~るほど!」となります。
見てわかる、見ることで納得するという子供の特性に合わせた説明が効果的です。
これは、塾の先生や家庭教師や個別指導の先生の力量に関わる部分、業界言葉では「ネタ」と言われるものです。
子供達に人気がある算数の先生はネタをたくさん持っているはずなのです。
だって、「なるほど」をたくさん与えてくれる先生なのですから。
ところが、これはなかなか家庭ではできません。
家庭で、「なぜ」を理解させるには、子供を先生役にしたミニ授業です。
「なぜ、直角三角形の中に垂線を引くと相似三角形になるの?教えて」と生徒役のお母さんが聞きます。
そしてお子さんが説明するのです。
その際ルールを決めておきます。
・「だって塾の先生がそう言ったもの」という答えはなし。
・すぐに説明できないときは、「次に教えてあげるから」という逃げはOK。でも何月何日に教えてあげるという日時の約束をすること。
(その間に、塾や学校の先生に聞いても良い)
このルールに従って楽しくミニ授業を開催してみてください。
生徒役のお母さんは、大げさにうなずいたり、「な~るほど」「すご~い」と合いの手をお願いします。
次回は、どの知識が使えるのかを見極める力のつけ方です。