前々回の講師ミーティング内容の続編です。
ある講師が話し始めました。
S講師:「塾のテキストは、入試問題に対応していない。」
塾のテキストは、順次改訂されていますからにわかには信じられませんでした。
私:「でも、塾のテキストは改訂され続けているんじゃないの?」
S講師:「確かに改訂はされています。でも、今の塾テキストは2~5年前の入試問題を基準に
作られていますね。
それを抜粋したり、改題したりまたはそのまま。
ところがそれでは今の傾向に合わない、間に合わないことがはっきりしたんです。」
私:「確かにそうだよね。」
S講師:「S塾にしてもN塾にしてもY塾にしても、小6の一学期までのテキストの文章レベルと、
実際の入試問題の文章レベルに大幅な乖離があるんです。
なぜなんだろうとずっと考えていたんだけれど、テキスト改訂のサイクルを考えてなるほどと
感じたんだよね。」
私:「Y塾が、小4生のテキストから順次改訂を始めているね。確かに難しくなっている。
塾のテキストは改訂を重ねる度に難しくなるね。」
S講師:「私みたいに、もう何十年もこの仕事をしていると、どうしても昔の入試問題や昔教えた
子供の学力を思い出してしまうんだけれど、どう考えても昔の方が易しい。素材文も設問も。」
T講師:「そうだよね。算数でもそれは感じる。」
私:「それって?」
T講師:「算数の難問がどのようにして生み出されているのかをいつも考えながら入試問題を
見ているんだけれど、今年の入試問題を解いていてもやはりそうなんです。
大学入試問題のアレンジが多いなと感じているんです。
また、最難関校が作り上げたいて大学入試問題からのアレンジ問題やオリジナルな難問が、
数年後には中堅校に改題されて出題されている。
大学入試問題それも東大の入試問題を毎年解いていると、これは中学入試問題に改題されそうだなと
感じることがあって、そのような問題の多くは中学入試問題に降りてきている。」
私:「前の話に戻るけれど、そのようなテキストに載っていない最新の入試問題への対応は、
9月からの5ヶ月では無理だということ?」
S講師:「記述が多い、文章が難しい学校ではとても無理だということがはっきり分かったと
言っていいでしょう。」
私:「なぜ無理なの?」
S講師:「子供たちの日常から大きくかけ離れた心理変化や状況把握が要求されているから、
慣れるのにどうしても時間が掛かる。そのような文章に関わっている時間が必要。」
T講師:「算数でも、塾の平常授業の指導がパターン把握を中心に行われている場合は、
試行錯誤の大切さを子供自身が感じるには期間が必要だと思います。
算数は、頭にしまっている解き方を当てはめれば一発で答えが出るものだと思い込んでいる子もいます。
成績上位生の中にもいっぱいいますから。」
私:「ということは、平常授業で単元を進めながらも、志望校の対策を並行してやっていかないと
間に合わないと。」
S講師:「そうそう。実体験が出来ないならば、文章を読んで疑似体験を多く積ませることが大切。
特に、自分の言葉でまとめさせる記述が多い学校については、書く練習も大切。」
T講師:「御三家などの試行錯誤が必要な学校については、どうしても時間が欲しい。
塾内のクラスアップだけに小6の1学期を使い切ってしまうと、後が苦しいですね。
今年の今年の○○君は、受かったから良かったんですが、私の実感ではギリギリ間に合った状態ですね。」
私:「なるほど、今年の開成の算数や桜蔭の国語などは、早めの対策がどうしても
必要だということですね。
ところで、Y塾のテキスト改訂の目的の1つが、入試に必要な全単元の基礎は小5で終わらせる
事のようだけれど、このことは上位校受験には大きなメリットになりそうだね。」
ST講師「それは当然ですね。」