前回は、理科が得意な、または得意になったお子さんの例を挙げました。

そこから垣間見られるのは、ご家庭全体のその知的好奇心です。

お父様かお母様、またはお二人ともが「なぜ」と思ったときに考えてみるとか、調べ習慣をお持ちであるように思います。

もうひとつ垣間見られるのは、子供がとりあえずやってみようとすることにたいして、ブレーキをかけない姿勢です。

小6の女の子が半田ごてを欲しがること事態珍しいことですし、そのようなことがあった時の、親御さんの常套句、

「そんな時間があったら勉強しなさい。」

をおっしゃらなかったことに驚きました。

子供は、体験を通じていろいろなことを学んでいきます。

それは、理科についても同じです。例えば、今、ほとんどの小学校の1年生は、春に、アサガオの種を学校から貰って帰ってきます。家で育てて観察させるという趣旨なのです。

中学入試問題の植物の単元で、アサガオの問題が他の植物に比べて多く出題され、しかも難しい理由は、日本の小学生のほとんどが、しっかりと観察をしているはずだという前提があるからです。

アサガオの種を、指の第2関節の深さに置く理由は、発芽した時に分かります。伸び始めた根によって、種が持ち上げられ、地上に頭をもたげた種子は二つに分かれ双葉になります。浅く植えると倒れてしまいますし、深すぎると頭を出すことが出来ません。

昔、学校の先生に、「第2関節の深さに植えなさい」と言われ、それを忠実に実行した子供の多くは、双子葉植物の発芽を受験レベルで習ったときに、「なるほど、そういう理由だったのか」と気づくことになります。

受験勉強を始める前や始めてからの豊富な経験があることと、まずやってみようという実行する意思が大切だと言えると思っています。

ただ、上記の観察にしても、子供の観察眼や注意力だけでは気付かないことがあります。周りの大人の手助けや一言も大切になってきます。

このように考え始めると、実は親御さまと同様に理科を教える立場の者の責任も非常に大きいと言えます。理科の担当の先生によっては、下のクラスの生徒のテストの平均点を上のクラス以上にあげることが可能です。そのような先生を何人も見てきました。そのような先生に共通するのは、「話が面白い」、「表情が豊
か」、「身振り手ぶりなどの動きが大きい」、「いろいろなことを知っている(博識である)」という事です。

良い指導者に全ての子供が恵まれれば良いのですが、それがほとんど不可能な事ですから、どうしてもご家庭の理科力が必要になってくるとも言えるのです。

近頃、◯◯理科実験教室が大はやりです。ほんの数日前にも、「今後の理科のために◯◯実験教室に行かせる方が良いでしょうか?」というご相談をいただきま
した。理科が、いろいろな現象に結びついていますし、目に見える現象出ある事が多いものですから、経験を増やす意味において、有効です。

ここでご注意いただきたいのは、「お客さんにならない」事です。お友達がやっているのを横で見ているだけではお客さんになってしまいます。視覚、手触りや
匂いの感覚を総動員する事で、お子さんの脳に印象深く記憶されるのですから、引っ込み思案で参加するのは大きな損になります。「自分からいろいろやってみ
ると面白いものよ」と言って送り出してあげて下さい。

また、日常的にお子さんにいろいろなことをやらせる事はもっと大切だと考えています。

草に水をやる。

重いものを移動させる。

細かい物を摘む。

いろいろな物の匂いをかぐ。

お湯を沸かす。

これら全ての事が理科の経験につながる可能性があります。