今回は、「頑張って勉強しているのに成績が上がらない症状とその対策(1)

について書いていきます。

(症状1)

ミスが多くて、点数が上がらない。家に帰ってきて解かせるとちゃんと正解を出せるのに、テストになると解き方が思い出せなかったり、つまらないミスをする。

 

実は、お電話でお話を伺うとほとんどの場合このようなお答えをいただきます。実は、この中に多くのヒントがあります。

 

「家に帰ってきて解かせるとちゃんと正解を出せる。」

このことから、勉強時間は確保できているお子さんだろうと判断出来るのです。

勉強時間が足りなくて、問題のパターン把握が出来ていないお子さんは、家に帰ってきて解こうと思ってもやはり解けないのです。

そして、「解き方が思い出せなかったり」というお母さんのお話から、暗記の算数にかなり偏って来て
いるかもしれないと予想するわけです。

そして、もしかしたら「解き方を覚えるまで繰り返して勉強しなさい。」という指導を強く受けている可能性があることを頭の片隅に置いてお話を聞き続ける事になります。

 

(知識のつながりを作る)

お子さんの学習は、親御さんの指導に強く影響されます。

基本問題を何度も解いていると、自然に応用問題も解けるものだという指導を過剰に受けた子供は、機械的に解くことを繰り返します。

「読書百編意
自ずから通ず」は正しいことだと私も思っていますが、それには前提条件が必要だと考えています。

その前提条件とは「理由を知りたいと思う意欲や、だったらどうなるのかに興味を持った状態」です。繰り返すことだけを目的にした暗記は、離れ小島のような知識の断片を作っていくことになりがちです。

本当の知識の習得とは、過去に覚え既に大脳に定着した知識に新しい知識をつなぎ合わせて記憶していくことだと思います。

知識同士のつながりは、学習を続けるうちに広がり、複雑に交わり合って、より強
固な知識に変わっていきます。

実は、このようなつながりのある知識が、生きた知識と言われるものですし、テストで生きてくる知識です。

「今使っている線分図は、倍数算で使ったもの
に似ているな」とか「あれ!これって鶴亀算と同じじゃん!」、「速さの問題なのに、いつの間にか三角形の相似を使っているぞ!」という頭の動きが知識をつないでいきます。

でもこれは、お子さんに命令したからと言って出来る事ではありません。

ここにちょっとしたコツがあります。

 

(何気なくニコニコと質問してあげる)

それは、「何気なくニコニコと質問してあげる」ことです。


例えば、

「難しそうな問題を解いているね。ところでその式で何が出たの?」

とか、

「その数字の単位は何なの?」

OKです。


ポイントは、「ニコニコ」です。


途中まで出来ているのに立ち止まってしまっているお子さんを前にした場合は、

「もう一度、問題文を読んでみたら気がつくかもしれないわよ」

とか、

「次に何が出せそう?」

と聞いてあげてください。


このような質問に頭は自然に反応して、離ればなれになっている知識に触手を伸ばし始めるのです。


一番良くない例を挙げておきます。


文章として書くとまるで漫才ですが、実はご家庭で一番よく見られる情景なのかもしれません。


「何なの!もうこの問題忘れたの!」

「うん。やったことは覚えているんだけど。」

「なんでちゃんと覚えようとしないの!だからクラスが上がれないのよ。」

「・・・・・・」

「これはね、こう線分図を書いて、この差をこの数字の差で割れば太郎君の5年前の年齢が出るから、それに5を足せば出るでしょ!今度こそわかった!」

「う、うん」

 

(笑い飛ばせないミス)

「あっ、ミスしちゃった」という子供の台詞は、
本来なら解けたはずの問題であることを主張しながら、「たいしたことじゃないんだよ、こんなことでしからないでね。」という気持ちも含んでいます。

中には、笑い飛ばせるミスもあります。

でも次のようなミスは普段の学習の状態を表すミスとして対策を講じる必要があります。


1 読み飛ばしのために、問われていない答えを書いている。しかもそれが頻繁にある。

2 条件を見落としたため解けなかった、または間違った答えになった。しかも、それが頻繁にある。

3 日常生活の常識ではあり得ない数字を答えにしている。

 (お父さんの年齢が15歳だとか、太郎君の歩く速さが時速30kmだとか)


これらのミスは、文章を読んで(視覚から情報を取り込んで)、文字や文章の意味を理解して、条件を整理して、解き方を思い出したり工夫して、、、、という、一連の大切な流れがショートカットされていることから起こると考えています。

 試しに、お子さんが算数の問題を読んでいる様子を前に座って見てください。5行の問題文ならば、視線は普通五回往復するはずです。それなのに、視線を1?2往復させて解き始めていませんか。

近頃このような子供が増えているように感じて仕方がないのです。


読み飛ばしミスの多い子供たちが、どのようにして問題文をとらえているのかに興味を持っていました。

興味という言葉を使うと、切実な問題になんと不謹慎なとしかられてしまいそうですが、子供たちがど
のように視覚情報(映像)をとらえ、それから意味情報を抽出してくるのか不思議でしかたがなかったのです。

そのメカニズムが近頃やっとわかったような気がします。


問題文をばっと斜め読みします。

その中でたまたま目に入った言葉や数字(ほとんどの場合は漢字と算用数字)を記憶します。

そのような漢字や数字を使ってあった過去に習った問題を思い出し、その問題の
解き方に当てはめます。

そうです。

不完全な速読をしてしまっているんです。

「240を割る」のか「240で割る」のかの読み取りミスはその典型のような気
がします。240のような大きな数の場合は、割られる数のはずだと思い込んでしまうようです。


うちの子は、まさにそうだと思われましたら、宿題の取捨選択をしてあげてください。

問題量を減らしてあげることで、じっくり時間をかけて問題を解いても大丈夫だという環境を作ってあげてほしいのです。

このような不完全な速読状態は、短い時間に多量の宿題をこなさなくてはいけない(たとえば、明日までにたくさんの宿題が残っていて、それをやっていかないと大変な目に遭う)という非常時の勉強方法が習慣化してしまったものです。

ですから気持ちの余裕を作ってあげることが大切です。

その後、鉛筆でなぞるよ
うにして(下線は必要な箇所だけに引かせて)問題文を読む練習をさせてください。

 

次回は、頑張って勉強しているのに成績が上がらない症状とその対策(2)を書いていこうと思っています。