■暗算がいけないのではない
計算間違いを多くする子の中に「なんでも筆算でする」という子がいます。
お母さんに「暗算はやめなさい」「必ず筆算をしなさい」と言われ続けてきた子です。
こういう子の筆算を見ていると、もう高学年なのに必ず繰り上がりの数を書いて計算しています。
繰り上がりの数を書くことは悪いことではないのですが、こういう子に2ケタ×1ケタの計算を暗算させてみると、計算ミスが多いのです。
ふだんから2ケタ×1ケタレベルの計算で、繰り上がりの数を短時間記憶する訓練ができていない(筆算では繰り上がりの数を書いているので記憶する必要がない)ためです。
この訓練ができていないと、制限時間のあるテストで焦って暗算した場合に計算ミスをしてしまうのです。
実際の入試、模試などで点を取ろうとすると、2ケタ×1ケタの計算くらいは素早く暗算できなければなりません。
ぜひ、お子さんの「暗算力」見直してみてください。
■暗算結果はメモ
計算ミスのもう1つの大きな原因は、何もかも頭の中だけでやってしまおうとすること。
暗算である計算をして、さらにその答えを使って別の計算をして・・・このような作業をすべて頭の中だけで済ませようとすると、どこかでミスをする可能性が高くなります。
また、間違ったときに「どこに戻ってやり直せばいいか」がわからなくなってしまいます。
だから、ひとつひとつの暗算結果はメモしておき、できれば単位などもつけて、何を計算したのかがわかるようにしておきましょう。
このような工夫で、算数の点は5点、10点と変わってきます。
「暗算はダメ」の一点張りではなく、なぜ計算間違いしているのかに注目すると、実は暗算の訓練が計算ミスの解決方法だった、といったことがわかることもあるのです。
▪️「一行問題」は典型的なものしか出ない
サピックスのマンスリーや組分けテスト、日能研の公開模試などのテストで出る「一行問題」と呼ばれる短い文章問題は、そうひねったものは出ません。
このような問題で間違う子は、実力がないというよりは、勉強のしかたが間違っている場合が多いのです。
例えば、次のような問題があります。
ある年のサピックスの1月「新学年組分けテスト(新6年)」の大問2のうちの1つ。
「10から99の2ケタの整数をすべて合計すると(     )になります。」
そう難しい問題ではありません。
時間さえあれば1つ1つ足しても答えが出る問題です。
「10から99までの2ケタの整数は全部で(      )個あります」
だったらさらに基本問題ですね。
10から99までの2ケタの整数は、90個あります。
基本的な考え方は、1〜99の99個の整数から1〜9の9個の1ケタの整数を引けば、10〜99の2ケタの整数の個数がわかる、というもの。
多くの子どもたちは、連続する数字や等差数列の合計を
(はじめの数 + 最後の数) × 個数 ÷ 2
で計算することができることを知っています。
(この公式に関しても「どうしてその公式で計算できるの?」と聞いてみてあげてください)
たとえば
1 + 2 + 3 + 4 + 5
の計算なら、
1 + 2 + 3 + 4 + 5
をひっくり返して元の式と上下に並べ、縦に足し算すると
1 + 2 + 3 + 4 + 5
5 + 4 + 3 + 2 + 1
↓     ↓     ↓     ↓     ↓
6   6   6   6   6
6が5つできますね。
これが、
(はじめの数 + 最後の数) × 個数
の意味です。
ただし、実際には
1 + 2 + 3 + 4 + 5
の計算を2つ分してしまった訳です。
だから
(はじめの数 + 最後の数) × 個数 ÷ 2
なんですね。
だからはじめの数が10で最後の数が99で、数の個数が90個だったら、
(10 + 99 )× 90 ÷ 2
で答えが出ることがわかるでしょう。
さて、お子さんにこの問題を一度出してみてあげてください。
2ケタの整数の個数が90個であること、上記の公式で計算できることが正しく出てくるでしょうか。
怪しければ、勉強のしかたを少し見直してみてはどうでしょう。
このあたりの見直しで、算数の点は10点、20点変わってくるものです。