■よく中学受験を表現しているマンガ「2月の勝者」
表題のマンガが小学館「ビッグコミックスピリッツ」に連載されているのですが、作者の高瀬志帆さんは私の著書を参考にしてくださったそうです。
お会いして話をさせていただきましたが、とても魅力的なお方でした。
もちろんマンガなのでデフォルメされていますが、塾業界をよく表している、とてもおもしろいマンガです。
このマンガの中で「お客さん」という表現が出てきます。
塾の成績下位者をさして、授業料を納めてくれる(だけの)存在、ということを表す言葉です。
確かに、進学塾では上位クラスを担当する講師ほどスキルが高い、という傾向があります。
発展問題など難度の高い問題をうまく教えなければならないですし、クラスのメンバーも精神年齢の高い子が多いので、ベテラン講師が上位クラスを担当、いわゆる新米講師が下位クラスを担当するという、このマンガのようなシチュエーションは実際に「ありがち」なのです。
必ずしもベテラン講師がよくて新人講師がよくないというわけではありませんが、進学塾という場所は成績上位の子に合わせてすべてのサービスが設計されているという側面は否定できません。
「同じ授業料を払っているのに、どうしてうちの子のクラスにはいい先生をつけてくれないんでしょう。」
そんなお声を聞くこともあります。
確かに一般のサービス業では、高いお金を払えば上質なサービスを受けることができます。
でも塾では、いくらお金を払っても成績が良くなければ良いサービスを受けられない。。。
そんな側面があるのです。
■塾のサービスをできるだけ享受するには
誤解を与えたくはないのですが、塾は「成績上位者だけを優遇するサービス」ではありません。
成績下位者のクラスでも、担当している先生方は必死です。
なんとか底上げし、希望の学校に合格してもらおうと懸命にがんばっています。
しかし
「開成中◯◯名合格」
ということばのインパクトは、中堅校や偏差値レベルが低い学校にくらべて圧倒的に大きいのです。
塾という営利企業の性質上「上位校に何人合格させているか」は大きな宣伝材料であり、命綱です。
でも、うちは必死で御三家を目指させたいわけじゃないとか、そんなに目の色を変えて受験に臨ませたいわけじゃない、習いごとや遊びや趣味なども尊重させつつ、無理なく受験させたい、そんなご家庭には「開成合格者数◯◯人」よりも大切なことがあります。
それは、我が子の現状を細かく理解してくれていて、今、これから何をすればこの子が伸びていくか、この子にとって最良の学習メニューは何かを考えてくれること。
そんなお手伝いを塾に望めるとしたら、やはり担当者と会話することだと思います。
先程も書きましたが、担当の先生は必死にがんばっています。
成績が悪いからサービスを中途半端に行う、そんな先生は現場にはいないはずです。
塾全体としての方向は、やはり成績優秀者が出す実績を大きくする方向に向いていますが、現場の先生方は目の前のあなたのお子さんの成績をあげたという純粋な気持ちで頑張っているのです。
だから、「塾のサービスを最大限に享受する方法」があるとすれば、そんな先生方と会話することです。
「◯◯くんのお母さん」の思いを現場の先生に伝えること。
家庭教師をしていていちばん幸せなのは、つねにお子さんと親御さん双方と対話ができること。
個別指導の塾ともちょっと違っていて、その家庭そのものとお付き合いできるところが最大の魅力だと思っています。
塾の内情を描いたマンガを読んで、そんなことをあらためて考えたのでした。