カテゴリー: 応用力をつける

算数 暗記と納得のさじ加減

先日、学習DVDの撮影をしてきました。
お母さん向けの動画も撮ったのですが、その中で、思い切って
「割合の3用法やテントウムシで割合を教える事はよくない。」
と話しました。
こんな思い切ったことを言ってしまって良いのだろうかと逡巡しながらも、力強く断言してしまいました。

どの塾でも、ほとんどの受験参考書でも割合の学習の始めには、
・比較量=基準量×割合
・割合=比較量÷基準量
・基準量=比較量÷割合
この3つの式が出てきます。
これが割合の3用法は、大人にとっては当然と感じるはずの式です。
ところが、子供にとってはそうではありません。

割合を習う前までのかけ算と割り算は、ほとんど1より大きな数を掛ける、1より大きな数で割るものです。
掛けると大きくなり割ると小さくなるという経験ばかりをしてきたことになります。
ところが、割合の場合、掛けると小さくなり割ると大きくなります。
これまでの身体感覚と異なっているわけですから、ほとんどの子供にとってスムーズには
納得出来ないのは当然のことなのです。

公式は、数字を当てはめるとオートマチックに答えが出せる魔法のツールですが、
それだけしか知らなければ、ほんの少し問題が変われば解けなくなってしまいます。

割合の学習で言えば、1より小さい数を掛ける、1より小さい数で割る計算を充分に練習すること。
その後、「○○が□□の△△倍」と言い換えてみる練習が効果的なのです。
充分にその子の身体感覚(大きくなりそうだ・小さくなりそうだという感覚)が育った後で、
スピードアップのために公式を利用していくべきだと思うのです。
このようなやり方が、「公式と納得」の理想的なさじ加減だと思っています。

たぶん、大人の脳であれば、公式を利用して何度も何度も繰り返していれば、
その知識が他の知識に結びついたり、他の事象に気付いたりする事が期待できます。
それも運に左右されることですが、子供の場合はそんなラッキーな事は滅多に起こってくれません。
今よりもほんの少しだけ「納得」を大切にした学習をしていただきたいと感じています。

数日前に、国際数学・理科教育動向調査の結果が新聞に掲載されていました。
前回に比べて大きく上昇していたのは嬉しいことです。
ところが、「学習が好き」という統計においては、小4では、73%もあった「算数が好きだ」の割合が、
中2になると「数学が好きだ」の39%に下がってしまっていることが気になります。

 「分かった!」という身体感覚を大切にした学習が、この問題解決のポイントになりそうな気がしています。

御三家を目指す方々に(2)

□悩み方が間違っていませんか(2)□
 
先週は、
これまで、上位クラスをキープしてきた子供たちは、「インプットの達人」であること。
そして、御三家レベルを目指すためには、
「頭脳の引き出しから、この問題を解くために必要な知識を探し出す意欲」
が、必要だというお話をさせていただきました。

今回は、その続きです。

「集団塾のメリットは、カリキュラムがしっかりしていることだ。」
このことは、折に触れお話ししてきましたが、ここで少しまとめておきましょう。
カリキュラムとは、下記の3つです。
1 授業の進行表
2 授業の進行表に伴う教材
3 授業の進行に従って行われる授業の理解度をチェックするテスト

カリキュラムがしっかりしている塾に通っている場合は、授業を受けているだけで、
入試に必要な単元や項目がもれなく、しかもオートマチックに学ぶことが出来ます。
これはこれですごいことなのです。
長年の入試問題の分析によって度重なる改訂努力を継続してきたその塾の宝物です。

そして、塾は、「解き方」を教えてくれます。
それも、研究され尽くした優れた解き方を提示してくれます。
ですから、「インプットの達人」は、授業をしっかりと聞き、家に帰って解き方を覚え込むことで、
理解度をチェックするテストでよい点数が取れてきたのです。

ところが、学習単元が一巡し終わった7月以降は、1週間の学習項目が飛躍的に
増えることになります。

小6の夏期講習はどの大手塾も約30日前後あります。
40日ある夏休みのほとんどを使うことになるのですが、
この30日で小4から小6の一学期までの2年半に習ってきたことのほとんどを
復習することになります。
(夏休み明けに行われる学力テストが、志望校合格に向けて試金石として利用される
理由です。)
また、二学期中に再度全ての単元を復習することになります。
この時期の1週間の学習範囲は小6の一学期までの5倍から10倍になります。

それまで、1週間または1ヶ月単位で確実にインプット出来ていたとしても、これほどに
ハイペースになってくると、普通はうまくいかなくなるものです。
一度は習った内容の復習ですから、もし100%覚え込んでいるならば全く問題は生じません。
ところが、忘れていることが想像以上に多いのです。

長年受験生を教えている私たちでも、小6の二学期には、
「え~、これを忘れちゃったの!」
という、言うべきでは無い台詞が口をついて出てしまうことがあります。
各塾の最上位クラスの生徒ですらそうなのです。

入試直前の5~6ヶ月は、
・既に覚え込んで定着している知識や解き方。
・過去に学習し一度は定着したが今は曖昧になってしまったもの。
・記憶からたぐり寄せることが不可能になってしまったもの。
この3つを上手に分類して学習をしていく必要があります。

概して、始めて学習したときに、
「あまりよくわからないけれど、とりあえずこの方法を使えば正解が出るんだな」
という学習をしてしまった単元や項目は、
「記憶からたぐり寄せることが不可能」
になっている事が多いようです。

また、解き方の順序をちゃんと理解できたもののなかで、始めてそれを習ったときに、
「はじめから終わりまでその筋道が理解でき、理解の過程で、『おっなるほど!』という
気持ちの変化(はたと膝を打つような気持ち)を体験できた項目」
の多くは、既に定着してテストに使える知識や考え方になっています。

ですからこの時期に必要な学習は、
「今必要なその知識が、上記の3つのうちのどの状態で頭脳に収納されているのか」
を見極める事から始める必要があります。

今は使えなくなってしまっている知識や考え方については、
『おっなるほど!』(はたと膝を打つような気持ち)
を体験させる事が理想です。

また、「理解度の3種類」は、確かに個人差が大きいのです。
しかし、その子の今考えていることに寄り添うようにして教えている場合には、
ほとんど予感が的中します。

「とりあえず正解は出せるが、『なぜそうなる?』と聞いてみれば、間違った説明をするはず。」

「知識は曖昧になっているが、その周辺部分で軽くヒントを出してやれば、『おっ』と叫んでから、
得意満面に解き始めそうだ。」

「この問題は正解できるし、説明させればちゃんと言える。
でも、この条件をこのように変えると多分見事に引っかかる。」

私自身のことを振り返ってみると、子供を教えているときには、
このような事をいつも考えているように感じます。
また、私たちのグループの先生方も同じなんだなと、毎週の勉強会で感じます。

手前味噌ですが、「その問題を前にして、子供の理解度について仮説を立て、子供の反応からその仮説の真偽を確認できる」事が、本当のプロの講師(個別指導や家庭教師というパーソナルな講師)だと考えています。

立体図形を得意にする

□立体図形を得意にする□

ここ、1ヶ月で増えてきたご相談内容は、「立体図形」です。男女比率は1:2、女子の方が多いようです。このようなご相談は、直接お子さまに教えることが出来たらすぐに解決させることが多いものですから、いつも歯がゆく感じます。

  塾で、立体の切断の図の描き方や、体積の考え方について、分かりやすい説明が無かったのかもしれませんし、実際に立体を切った経験が乏しいために、実感を伴った想像ができないせいかもしれません。

見えない向こう側を想像する必要がありますから、どうしても経験が必要です。いろいろな立体を組み立てたり、切ったりという経験を積み重ねた後で、見取り図をちゃんと書く練習も必要です。
  他の単元に比べて、はっきりと立体図形が苦手の場合は、立方体をいろいろな方向に切ってみることから始めさせてください。

 私が、教えに行っているご家庭では、大根を立方体に切り揃えるのはお母様の役割り、その立方体を切るのはお子さまの仕事、というようにしてもらっています。ちなみに、人参でも上手く出来ます。切り刻んだ大根や人参は、翌朝の味噌汁の具に使っていただくことにしています。

  お子さまが切る時は、まず、テキストの問題に出ている切り方から始めさせてください。その後、二等辺三角形の切り口・正三角形の切り口・正方形の切り口・長方形の切り口・平行四辺形の切り口・五角形の切り口・正六角形の切り口を、この順に実際にやらせてください。

 その切り口を、立方体の見取り図に一つ一つ書かせてください。見取り図を書かせる時の注意点は、「見える線は実線で、見えない線は点線で書く」ことです。見取り図がかけるようになれば、すでに立体図形が分かる間際まで来ています。

その後、「直角三角形の切り口は出来る?わからなかったらいろいろと切ってみてもいいわよ。」と聞いてあげてください。直角を作ろうとすると、どうしても四角形になってしまう経験が大切です。

 これを読んでくださっている方のお子様が、小4生や小3生の場合は、お料理の手伝いをたくさんさせてください。自然に立体の切り口の感覚を身につけさせることが出来ますし、それ以外にも多くの大切な能力が高まっていきます。お子様には、勉強を意識させずに、楽しくやってくださいね。

  このような訓練をした後で、立方体の3点を通る切り口の問題をやらせるようにしてください。その時は、「並行な平面をもう一つの平面で切ると、切り口は(高さは違うけれど)平行になる」を呪文のように言わせながら、切り口を書かせてみてください。
この方法で書けないもの(立方体の辺の中点3つを通るように切った正六角形など)は、覚えさせる必要があります。
  これらの訓練を、数時間かけてやった後で、始めて体積の計算や表面積の計算を解かせてみてください。

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▼2022年11月18日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「<志望校・併願校の決め方 校風、偏差値と問題傾向から決める! 合格するための受験校の選び方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年10月28日(金)

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▼2022年9月30日(金)

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▼2020年10月14日(水)

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▼2020年6月12日(金)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「ウィズコロナ時代の中学受験を成功させる夏の過ごし方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年6月6日(土)

増進堂 受験研究社が主催するオンラインセミナー「学校再開・塾再開にどう向き合うか」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年2月19日(水)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年首都圏中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年2 月6日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年関西中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2019年10 月11日(金)

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