いろいろなご家庭にお伺いして子どもの学習を見ていると、どうしても普段の学習が気に掛かりま
 
す。そして、普段の子どもの学習スタイルは、お母さんが学習をどうとらえていらっしゃるか
 
に強く関わっていることに気付かされます。
 
「基本問題を3回はやらせているのに点数が上がりません」
 
「テストで間違った問題は、3回解かせるようにしています」
 
このような話を聞くと、なんだか不安を感じるのです。
 
もしかしたらお母さんは、何度も同じ問題を解かせることによって、理解が深まり応用力が身につい
 
ていくものだと信じていらっしゃるのではないかと心配になるのです。
 
中学生や高校生になると、新たに入ってきた知識や考え方は、過去に大脳に収納され
 
た知識や考え方に自然に結びつくことが多いのですが、9歳の壁をやっと過ぎた子どもたちの場合は
 
そうではありません。ばらばらに入ってきた知識は、頭の中でばらばらのまま放置されます。「こ
 
の数字とあの数字を引いてから、ここの数字で割る」というような表層の理解にとどまってしまうの
 
はそのためです。
 
基本問題を3回繰り返すうちに、「なぜかは分からないけれど」こうすれば正解が出せることだけ
 
を覚えます。ところがばらばらに収納された知識は、すぐに散逸してしまいます。
 
その週のチェックテストの時は覚えておくことが出来るのですが、一ヶ月後になると、その後に入っ
 
てきた知識と絡み合って何が何だか分からなくなってしまいます。
 
多くのお母さん方のご自身の学習で一番強く印象に残っているのはたぶん大学受験でしょう。大
 
脳が完成されたあとの学習です。英語を覚え、社会を覚え、古文を覚え・・・。
 
覚えることに集中することで大学受験を成功した方も多いのではないでしょうか。
 
ところが、私立中学上位校受験はそうではありません。大切なのは「納得感」です。最初に習ったと
 
きに、「なるほど!」とか、「あっ、そうか!」という快感がわき上がるような理解です。このとき
 
に、新たな知識は過去に収納された知識につながったのです。このような納得感を持って覚えたり理
 
解した事柄はなかなか忘れません。また、応用することも容易です。
 
「何度も何度も解かせているのに総合テストになったら間違ってしまう」場合、ここで一度、子ども
 
の学習の仕方を見直してあげてください。
 
「なぜそうなるの?」
 
「その式で何が出たの?」
 
と聞いていただくことで、子どもが分かっているかどうかが分かります。
 
間違った学習で子どもが疲れてしまうまでに、学習のやり方を出来るだけ早く変えてあげてくださ
 
い。