先日、関西での会合が終わり新幹線で帰京はTさんと一緒でした。
このTさんは私と同様に長年中学受験に携わっています。私が信頼するお一人です。
 京都を過ぎて関ヶ原あたりだったでしょうか、ある塾の話題になりました。
○学園の生徒を担当された場合に注意されていることは何ですか?とお聞きしました。
Tさんの返答はこのような内容でした。
○学園では見事な解き方で教るが、それが子供たちに再現できないような見事すぎる解法で
あることが多い。しかも、その方法での解き直しが宿題になり、その上宿題チェックが厳しいときている。
不真面目な生徒は良いとして、真面目な義務感の強い生徒はノートにとってきた式や数字を
丸写しにしている。
その子の身の丈に合った解き方で教え直すと、すばらしい理解を示すことがほとんどだ。
でもそのような方法で解いていくと塾でこっぴどく叱られる。
本当に○学園でスランプになった子供を復活させるのは難しい。

私も全く同感です。

この○学園だけではなく、いわゆる裏技がやたらと多い塾があります。
裏技に当てはめる事で一部の難問が魔法のように解けます。
ところが、問題文の表現が少し変わったり、条件を少し変わるだけでお手上げになります。

子供の理解を超えるような見事すぎる解法や裏技の多用が、子供たちを苦しめている場面を
多く見てきました。その一方で、それらを見事に使いこなすほんの一部の子供たちも見てきました。

まず、その問題を基本に忠実に解き、問題の本筋を理解した上で見事な方法に挑戦するという
二段構えの学習が必要だと思います。
例えば、今年の御三家の算数を見ますと、喜ばしいことに裏技で見事に解ける問題は多くありません。
条件を理解して題意をとらえて、愚直に処理を始めることが必要な問題が多かったのです。
うがった見方をすれば、中学校の先生方が、裏技の暗記学習を習慣にして入学してきた生徒に
疑問を感じられているともとらえる事が出来ます。

確かに、大学受験に向けての数学や物理の学習では公式暗記から入るのは愚の骨頂です。
公式の導き出し方やその意味の理解を最重要視するべきなのです。
「いざとなったら公式を自分で作ることが出来る」これが大学受験での本当の学力だと考えています。
ある有名予備校授業で、数学の看板講師の方が生徒たちを前に、
「私は、年間に2~3個しか公式を覚えろとは言わない」と宣言されたそうです。
さすがだと思います。

せっかく志望校に合格したのに、中学や高校で落ちこぼれてしまう子供やついて行けないと
感じている生徒が実に多い事をご存じでしょうか。
少なく見積もってそれぞれの中学校の30%の生徒がそう感じているはずです。
そうなってしまった原因の1つが、この裏技の暗記学習だと思うのですがいかがでしょう。