日能研テキストの小5生用が改訂されたということは、以前お知らせしました。
その後、そのテキストを使って私自身が家庭教師として教えたときに感じたことや、他の先生の意見を私なりに解釈してみたいと思います。
4教科共に、自分の頭の中の言葉を上手に利用して考えたり、理解することを目的に作り変えられていることがわかります。思い切った改訂をしたものだと思います。
これまでの日能研のテキストは、本科テキスト・栄冠テキスト共に下記のような問題点が指摘されていました。
「全ての生徒はカリテに向けて一生懸命勉強をします。このため、ある程度は点数が取れるようになりますが、出題範囲の記憶に頼った勉強になりがち」
「繰り返し学習の暗記で何とかなってしまうことが多く、頭を使う勉強をやらせにくい」という声が、内外(内:日能研で実際に教えている講師。外:家庭教師や個別指導の講師)から私に届いていました。
この、声が日能研にも届いていたのでしょうか。でも、これだけの思い切った改訂は、社全体の今後の経営戦略の根幹に関わることですから、外野の声に耳を傾けた結果だとは考えにくいと思います。
日能研の成績資料の充実ぶりは、目を見張るものがあります。特に個人の成績は、すべてコンピューターによってデーターベース化されています。その分析結果や、現場の先生方の声の力が大きかったのだと想像していますが、実際のところはわかりません。
一方で、ここ1ヶ月で日能研の小5のお子さんを持つ親御様からの相談メールが増えています。これまで通りの「カリテは取れるのに、センターが取れなく
て・・・」という内容のものは同数ありますが、「カリテすら点数が取れなくなってきた。」というご相談が急に増えたのです。テキストの改訂と何らかの関係
がありそうです。
これまでのテキストの時は、「テキストを教える」ことで、受験の基礎部分は教えることが出来たのではないでしょうか。
ところが改訂版の場合は、「テキス
トで教える」力量が必要になっています。
この、「テキストを教える」と「テキストで教える」という文言は言葉遊びのようですが、実は教える力量を表す言葉
としてよく使われるものです。
「あの先生は、テキストを教えることは出来るが、テキストで教える力量は無い」というような使われ方です。
テキストに沿って、その配列通りに教えていけば決められた範囲を教え終わることが出来ていたはずなのですが、改訂版で教えようとすると、「その問題群の解説を通して、子供たちに何を伝えるのか」を考えざるを得ないようになります。
算数においては、問題文はそっくりなのに、解き方が全く異なる問題が2問続いていることがあります。このような場合は、問題文から何が条件として与えられ
ているかを判断させ、何を書いて見れば解けそうかを予想させるという手順が必要になります。
講師の「問題分析の力」「質問する力」「読むことに集中させる
演出力」などの力量が問われることになります。
社会のテキストは、ちょうど歴史に入った段階での改訂です。
重要事項の羅列が中心となっていた旧版とは異なり、「読み物」の形式となっています。重要事
項を太字にすることすらされていません。
「読み物」を読み、人物の関連や歴史的な事件との関わりを読み取った上で、記憶に定着させなさいという、勉強の王道を求めるテキストとなっているとも言えます。
でも、小5生にそれが出来るのかな?という心配があります。
実際の授業では、重要事項を板書し、要点を話すということがされているようです。
子供たちの授業中のノートを見ると、見事に要点がまとまっています。
まるで旧版の本科テキスト内容を書き写したような内容です。
「板書を書き写すだけで精一杯で、先生の話を聞いている余裕はなかった」と話すお子さんもいまし
た。
もし、日能研が”予習禁止”の塾ではなく、事前にこの「読み物」を読んで、授業に参加すれば理解しやすいと思いますし、定着も進むと思うのですがどう
でしょう。
このように考えていくと、改訂版のテキストは、「本来のあるべき学習方法」を要求していることになります。
算数では:丸暗記だけの勉強じゃあだめですよ。ちゃんと納得するまで考えたり作業をしたりしましょうね。
理科や社会では:言葉の丸暗記だけではだめですよ。事象の因果関係をちゃんと理解して知識同士をつなげていくようにしましょうね。
このような日能研側の声が聞こえてきそうです。
「カリテですら点数が取れなくなってきた」というお子さんをお持ちの親御さんには、”勉強方法を見直す良い機会だ”ととらえることをお勧めします。
解き方の丸暗記の学習になっていないだろうか、問題文をしっかりと頭に入れてから考え始めているだろうか、重要事項の言葉だけの暗記になっていないだろうか、このようなことを少しチェックしていただく必要があるように感じています。
今後、このテキストを日能研の先生たちがどのように上手に料理されていくのかを、期待しながら待ちたいと思います。
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