中学受験の学習を進める中で、多くのお父様・お母様からこのようなご相談をいただきます。

「うちの子は、理屈がわからないと先に進めず、時間がかかりすぎてしまうんです」

「公式をただ暗記するだけで、少しひねられると手も足も出なくなります」

実は、学力をスムーズに、かつ深く伸ばしていくためには、相反するように見える「割り切り」「興味関心」という2つのエンジンを使い分ける必要があるのです。


1. お子さんの頭の中では、常に「どうして?」と「やってしまおう」が戦っている

勉強が進まないとき、お子さんの頭の中では葛藤が起きています 。

「理屈はわからないけれど、とにかく終わらせなきゃ」という焦りと、「納得できないものは気持ち悪い」という知的な誠実さのぶつかり合いです。

この葛藤を整理し、「今はどちらのモードで進むべきか」を導いてあげるのが、我々大人の役割です。

2. 「割り切り」という名のアクセル

一つ目は、「これはこういうものだ」と思い切って受け入れる力、つまり「割り切り」です。

中学受験の抽象度の高い概念(比の概念や特殊算など)や、イメージが難しい理科の原理(浮力や電気など)に出会ったとき、すべてをその場で完璧に理解しようとすると、学習スピードが極端に落ちてしまいます。

  • 「今はわからないけれど、まずはこのルールに従って解いてみよう」
  • 「先生がこう言っているから、一旦信じて進んでみよう」

このように「型」を先に受け入れてしまうことで、学習の停滞を防ぐことができます。

実は、「使いこなしているうちに、後から理屈が追いついてくる」というのは、勉強においてよくあることなのです。

3. 「興味関心」という名のエンジン

二つ目は、「これはどういうことなんだろう?」と立ち止まって考える力、すなわち「興味関心」です。

ただの丸暗記(割り切りすぎ)では、応用が効きません。

  • 「なぜこの公式が成り立つんだろう?」
  • 「この歴史の出来事の裏には、どんな理由があるんだろう?」

こうした疑問を持ち、自分の頭で納得しようとするプロセスこそが、本物の「思考力」を育てます 。興味を持って取り組んだ知識は、忘れにくい「生きた知識」としてお子さんの血肉になります 。


4. 大切なのは、この「二刀流」を使い分けること

では、どのようにこの2つを両立させればよいのでしょうか。

お子さんの状態必要なアプローチ親御さんの声かけ例
考えすぎて進まない時「割り切り」を促す「今は一旦ルールとして使ってみよう。後で絶対『あぁ!』ってわかる時が来るから大丈夫だよ」
作業的になっている時「興味関心」を刺激する「これ、図にしてみると面白いね。どうしてこうなると思う?」

勉強がスムーズに進んでいる子は、無意識にこのスイッチを切り替えています。

「ここはとりあえず飲み込む(割り切り)」「ここはじっくり味わう(興味関心)」。このリズムが作れるようになると、偏差値の壁をひょいと乗り越えていくことができます。


5. うまく回らなくなった……そんなときは?

特に5年生に入ると、学習量も難易度も一気に跳ね上がります。すると、どうしても「割り切り」の割合が増えすぎてしまい、「手順だけの暗記」でやり過ごそうとする子が急増します 。

しかし、近年の中学入試は、知識そのものではなく、持っている知識を活用して自分の言葉で答える「思考力」や「表現力」を問う問題へとシフトしています 。

具体化と抽象化の両軸を使い、目の前の問題に対して「なぜ?」と深掘りしていく姿勢が求められているのです 。もしお子さんが「作業的な勉強」に陥っていると感じたら、家庭では「教える」のではなく「教えてもらう」ことを試してみてください 。

「これ、お父さん(お母さん)にもわかるように説明してくれる?」 「あ、今の話、この前のニュースや、台所でお手伝いしたあのことと繋がるね!」

お子さんから教えてもらいながら、既知の知識や日常生活と紐づけていく。この活動こそが、本当にかしこい子の共通点である「勉強メンタル」を育てることにつながります。


6. 本当のかしこさを支える「勉強メンタル」とは

私が多くの受験生を見てきて確信しているのは、優れた頭脳を生かせるかどうかは、この「勉強メンタル」次第だということです 。

勉強メンタルとは、単なる精神論ではありません。「なぜそうなのだろう?」という好奇心や、自分の思考を客観的に捉える力(メタ認知能力)、そして「自分なら解ける」という自己肯定感の総称です 。

このメンタルを育む土台となるのが、実は「幼児期からの身体感覚」です 13

  • 公園のブランコで感じた「加速する感覚」
  • キッチンで計量カップを使い、水の「かさ」を体感した経験
  • 親御さんがいつもご機嫌で、どんな些細な疑問も面白がってくれたという「絶対的な安心感」

これらの豊かな経験が、受験勉強の抽象的な知識と結びついたとき、子どもは「あ、あの時のアレか!」と感動し、自走し始めます 。


7. 最後に

お子さんがもし、どちらかに偏りすぎていると感じたら、それは成長のチャンスです。

「全部理解しなきゃダメ」でもなく、「黙って覚えなさい」でもない。

この2つのバランスを意識し、こころの動きを伴った学習ができるようになれば、お子さんの視界はパッと開けるはずですよ 。

受験勉強を通じて、一生ものの力となる「勉強メンタル」を一緒に育てていきましょう。


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