西村則康です。

年間5000件近くご質問が届く中学受験情報局には、多くの親御さんから「国語をどうにかしたい」「入試の長文が読めるようになってほしい」という切実なご相談をいただきます。しかし、そこで「入試の解法テクニック」から入ってしまうのは、実は遠回りの原因かもしれません 。

中学受験情報局でも、国語の学習について、丁寧に解説しております。
中学受験 国語の成績を上げる勉強法!読解力・記述力のコツをプロが解説

今回は解き方のテクニックを身につける前に、国語学習に悩まれる親御さんにぜひ知っておいていただきたいことについて、お話いたします。

「文章を読む力」にはレベルが存在します。受験にのぞむ子どもにとっては、このレベルを知ることはとても重要です。今のお子さんの状況はいかがでしょうか。探っていきましょう。


文章を読むレベルを知るための「6つの力」

私が40年の指導経験から確信している、文章を読み、国語の問題を解いていくための力について分類しました 。それぞれの力に対して、学年によってレベルが変わってきます。

1. 語彙の蓄積(言葉を知っているか)

文章を読むための絶対的な土台です。言葉を知らなければ、文章を読み進めることはできません。これは単なる暗記ではなく、日常の暮らしや親子の会話の中でどれだけ豊かな言葉に触れてきたかが問われます

学年が上がるにつれ、家庭内では出てこない学術的な言葉や抽象的な言葉が登場しますので、文脈とこれまでの知識をあわせて意味を導き出す力が要求されるようになります。

2. 身体感覚とのリンク・イメージ化・創造性(実体験と結びつくか)

「暑い」「悲しい」「悔しい」といった言葉を読んだとき、自分の経験した身体感覚を思い出す力です 。自分の経験に引き寄せられないと、特に自然現象の描写や物語の心情理解は難しくなります

学年が上がるにつれ、未体験の状況を扱う文章も増えますが、それを自分と同一化するのではなく、登場人物の感情を客観的に感じ取る力が必要となります。

3. 文章を読むスピードと体力(走り続ける力があるか)

昨今の中学入試はどの教科も文章が非常に長く、大人でも怯むほどの分量です 。本をたくさん読んでいくうちに、ジョギングで筋力がつくのと同じように「読む体力」がついてきます 。後の章でも解説しますが、ただ読ませればいいだけではなく、どのように読ませていくかもとても大切になります。

低学年では、音読や親御さんと一緒に読むなどを通じて 、まずは読むことに親しむことを大切にしたいですね。

4. 文章の意味・文脈・構造の理解(「なぜ?」に納得できるか)

文章を問題としてだけ向き合うのではなく、正しく文章の意味を読み取り、新しい知識として驚きと感動を味わい、納得しながら読み進める力です。あまりに早く文章を「問題」として向き合うようになると、文章の意味に対する納得を得られないままになり、文章が苦手になることもあります。

学年が進むと、意味の理解だけでなく、文種(物語・説明文など)による文章の構造を知り、どう読み解けばよいのかを意識できることが求められます。段落内や文章全体での重要ポイントを把握する力が不可欠になります。

5. 要約・アウトプット力(自分の言葉で再構築できるか)

読んだ内容を整理し、他人に説明できる力です。低学年では、今日授業で習ったことを親に「おしゃべり」として再現するアウトプットから始まり、次第に読書感想文やテストの記述などを通じて鍛えていく必要があります。これは文章を早く読むことや、記述問題への対応力に通じる本当の読解力を育てます 。

6. メタ認知能力(客観的な視点を持っているか)

高学年になり、実践的に問題を解く中で身につけていく力です。自分の思考や行動を客観的に認識する力です 。頭のいい子は、自分が正解したかどうかという「結果」よりも、「この問題の最大のポイントは何だろう?」と、問題の中身や出題者の意図に関心を抱くことができます。文章の構造を理解し、出題者の意図から解答の推論を立てられるようになると、的確に必要な箇所を素早く見つけ出せるようになります 。


多くの家庭で見落とされる「読むスピード」の壁

語彙を補う練習は、多くのご家庭で熱心にされています。しかし、3の「文章を読むスピード」を上げることは、意外にも見落とされがちです。

近年の難関校入試では、文章全体で1万字を超えるような出題もあり、スピーディーに読む力が不可欠となっています 。国語が苦手な子の多くは読むスピード自体が遅く、内容を深く理解するための時間を十分に確保できないため、解答テクニックばかりに目が行って成績が不安定になりがちです。

文章を早く読むためには、テクニックではなく、正しいトレーニングが重要です。慣れない場合は音読やリレー読みから始めるのが良いでしょう

少しずつ長い文章に触れ、物語の世界を楽しむ経験を積むことで、筋トレのように読む体力がついていきます 。中学受験では1分あたり1000文字から1500文字程度読めることが求められますが、まずは低学年で1分400文字程度を目安に、今のレベルを少しずつ上げていけるようにしていきましょう。

「構造の理解」が塾の解法を武器に変える

レベル5の「構造の理解」まで到達すると、お子さんの国語力は飛躍的に伸びます。 文章が「どのような論理で組み立てられているか」を捉える力は、選択問題で正しい選択肢の根拠を見つけ出すのにも役立ちますし、記述問題で自分の考えを正確に伝えるための大きなアドバンテージになります 。

ここで初めて、塾で教えられる解法テクニックが真の武器として機能し始めます 。

  • 物語文: 登場人物の心情変化に注目する 。
  • 説明文: 筆者の主張と具体例を分ける。
  • 随筆: 筆者の経験談とそこからの主張を読み解く。
  • 解法技術: 接続詞への注目や、段落の要約など 。

「勉強メンタル」が国語を面白くする

必要な力とそのレベルについてお話ししましたが、その前にもっと重要なポイントがあります。それは、親子共に持ってしまっている「国語は苦手だ」という「意識」です。

苦手意識があると文章を読むのが遅くなり、行き当たりばったりの答えを出す悪循環を招きます 。私が今回これらのレベルを分類したのは、何が足りないかを知り、適切にトレーニングすれば国語は得意になる可能性があることを知っていただきたかったからです。

国語に対する意識を「得意になるかもしれない」「読むのが楽しくなるかもしれない」というポジティブなものに切り替えることができれば、学ぶ姿勢は大きく変わります。私たちはこうした「学びに向かう姿勢」を「勉強メンタル」と呼んでいます 。

正しく国語に向き合い、答えを導いていく過程で、普通に読むだけでは得られなかった文章の面白さや、登場人物の感情に深く共感できる瞬間があります。文章を読むこと自体に楽しさを見出せれば、入試の長文を前にしても「どんなことが書いてあるんだろう?」と、前のめりに読み進めることができるようになります 。

もしお子さんが国語に苦戦しているなら、まずは語彙や身体感覚、読むスピードといった土台に戻り、なごやかな会話の中で「言葉を楽しむ」ことから再スタートしてみませんか 。