月: 2018年9月
■図形が苦手にならないために
算数の図形の分野についてはよく「センスが必要」「小さい頃からの積み重ね」「親も苦手だから」といった声をお聞きします。
たしかに、小さい頃から積み木や色板、定規を使って図形に親しむことを繰り返した子とそうでない子の間には、図形への親しみや身近さ、感覚などに違いが若干出るように思います。
たとえば立方体の展開図を頭の中で組み立てられる子と、それができない子がいます。
折返しの様子や立体ができあがる過程を想像できるかどうかは、小さな頃に折り紙などの手遊びをたくさんしたかも影響してきます。
お子さんが就学前ならクレヨンや鉛筆でまっすぐ線を引いたり、お母さんがひいたお手本のラインをなぞったり、たくさん書く練習をさせてあげてください。
また、折り紙で図形の力をつけるための書籍なども発売されていますね。
■高学年で図形が苦手なら「合言葉」を
もうすでに小学校高学年、受験勉強も始まっているという場合は、あまり基礎練習ばかりに時間を費やすことができません。
そんなお子さんは「合言葉」をできるだけたくさん知っておくと良いと思います。
「合言葉」とはどんなものかというと
「円の問題の補助線を引くときは、中心から」
「台形が直線で分割されていたら、相似比・面積比を使え」
といった「こんな問題へのアプローチは、こうなることが多い」という知識のことです。
塾の先生やプロの家庭教師ならたくさん知っていると思います。
教えてもらって知識をつけ、その知識の総体として「センス」を磨けばいいですね。
■感覚が追いつかないときは、知識で補う
私は平素から「暗記型学習に陥るのはよくない」と提唱しています。
中学受験の勉強はそれでなくても量が多く、次の週までにやるべきことが盛り沢山です。
その結果、考えることなく「習ったとおりに暗記して当てはめる」の繰り返しになってしまうのが「暗記型」の勉強。
こうなると、考えるという要素が少ないから勉強が面白くなく、「勉強嫌い」にさせてしまいがちなのです。
しかし、高学年になって「図形が苦手」というお子さんに「センスを磨け」というアプローチばかり押し付けると、結果が出るのに時間がかかってしまうのです。
だから上記のような「合言葉」も使って、センスと知識の両方で勝負しようということです。
前田昌宏氏が著者で、私も監修者として関わらせていただいた「中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 算数・図形問題編」(実務教育出版)にはそんな「合言葉」がたくさん散りばめられています。
よかったら手にとってみてください。
■机の上以外の勉強も
学年も後半、4年生の塾での学習内容も前半にくらべると難度が上がってきていますね。
速さや図形に関する問題など、5年生へと続く重要単元が目白押しです。
一方で、学校行事も多く、忙しい時期です。
学習と日常生活とのバランスを大切にしたいですね。
近年の入試問題(だけでなく子どもたちを取り巻く環境そのものもそうなのですが)は、「ちゃんと遊んでますか?」とでも言わんばかりの問題が増えています。
「机の上の勉強だけでなく、生きていくのに必要な知恵をつけ、経験を積んでいますか?」ということを問うような出題です。
麻布中学校で出題された「ブランコのこぎ幅を大きくするには」といった問題は、ふりこの問題ではあるのですが、ブランコをこいだ経験があるかどうかで、理解度が大きく違ってきます。
■本物に触れる機会を
「本物に触れる機会を持ちましょう」という意味のお話をいろんなところでするのですが、これは何か特別な経験をさせようというのではありません。
当たり前におこること、夏になれば暑く、冬になれば寒い。
台風などの自然災害は厄介ですが、避けては通れないものでもあります。
そのようなものから隔絶されすぎた環境ばかりで過ごすと、本来人が持つ感覚を失っていきます。
お家が大きなマンションで、部屋の中にいると自然の音や風、空気から隔絶された環境のご家庭もあるかもしれません。
住環境はご家庭の都合やさまざまな制約もあり、いかんともしがたい面もあると思います。
大規模マンションの利点もあるでしょう。
でも、もしもそのような住環境であるなら、お休みにはできるだけ自然に触れられるような経験をさせてあげるのがいいと思います。
気候もお出かけに適したものになる季節。
4年生は、勉強と遊びをしっかり両立したいですね。