月: 2018年4月

中学受験 近年の算数、理科の出題傾向について感じること

主宰する家庭教師「名門指導会」の講師のみなさんと例年入試問題を分析するのですが、2018年の各学校の入試問題を解いて感じたことがいくつかありました。

■算数が易しくなった?

開成の算数が易しかったのは、今年の1つのトピックです。ではどのくらい易しかったのかというと、これはもう拍子抜けするくらい易しかった。

「典型的なパターン問題」といった問題が多く、「どう解くのか」と頭を悩ませるような問題はありません。少なくとも開成を受験するお子さんたちにとってはそうだったでしょう。

では難関校全般に関してはどうだったかというと、やはり難問は減ったと思います。 しかしこれは「すべての受験生にとって算数が易しくなった」ということではありません。 相変わらず桜蔭は強靭な処理力を求める問題、麻布は思考力、作業力を求める問題を出題しているという意味では、各校例年通りです。ただ、受験生の誰もが解けず「捨て問題」とされるような類の問題は少なく、しっかり受験勉強を続けてきた子どもが粘り強く取り組めば解決できる問題が多く出題されていたという印象です。

つまり易しくなったとはいえ、暗記型の勉強を続けてきた子には太刀打ちできないという意味では、難関校の出題傾向は相変わらずでした。

■記述やデータの読み取りが増えた

理科 理科に関しては「アクティブラーニング」を意識してか、対話形式の素材文から考えさせる問題が増えました。 開成や筑駒ではお馴染みの出題ですが、例えば先生と生徒が何かについて話している、その内容を登場人物である生徒と一緒に考える、というものです。 習っていないことがらを、先生が出すヒントを手掛かりに考える、という思考力を試す出題です。

記述やデータの読み取りに関する問題が多くなったのも、近年の特徴です。 記述も「お約束通りに文章を書けば点がもらえる」実質丸暗記の問題ではなく「理由の理由」を聞く問題も増えています。

たとえば「アルコールランプのアルコールが少ないと危険なのはなぜですか」の答えは「爆発するおそれがあるから」でいいですが、「なぜ爆発するのか」に上手く答えられる子は少ないのです。 アルコールが少なくなると、アルコールランプにできた空間に充満したアルコールの気体に引火するおそれがあるのですが、そこまでわかっていないと答えられない問題です。 たしかに記述題の中には「お約束だから覚えておこう」というものも少なくないですが、たまには「そもそもなんでだっけ?」と「理由の理由」を考えてみることも大切です。

■知識だけでは解けないが・・・

2020年の教育改革を前に「思考力・判断力・表現力」が叫ばれていますが、これは「知識の丸暗記だけでは問題を解決することはできない」ということであり「知識はなくても思考力があれば良い」「知識にはそれほど価値はない」ということではないと考えています。

前提となる知識があって初めて考えられるのであり、また計算したり作業してこそ思考を展開し、前に進めていくことができるのです。 その意味で、たくましい計算力、試行錯誤の力を試す御三家ほか難関校は、もう何年も前から「改革後」をやっているんだなとあらためて感じたのでした。

小学4年生 早稲アカの宿題が回りません… ​

主任相談員を務めさせていただいている「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」に、下記のようなご相談をいただきました。(相談内容は、個人の特定ができないよう一般化、アレンジしています)

「3年生2月から早稲田アカデミーに通わせていますが、毎週の宿題が多すぎてまわりません。毎回の授業の確認テストでも点が取れず、本人のモチベーションも下がってきています。どうすれば効率よく復習、宿題ができるでしょうか。

■塾の宿題をすべてやるという発想を捨てる

いろいろなところでお伝えしていますが、塾の宿題は全部やらなくても大丈夫です。
ただ、ではやらずに放置する、ということではありません。取捨選択が必要です。
まずは、担当の講師や校舎長に現状を相談し、やるべきことを絞ってもらうところから始めるとよいと思います。

早稲アカは「大量演習」「体育会系」などと評される塾ですが、相談すれば柔軟に対応してくれるという側面もある塾です。
親が連絡し先生に時間をとってもらうか、文書で相談し返事をもらうという形がよいでしょう。

理想は、「基本問題だけやりましょう」といった「問題難度」という視点だけでなく「この問題だけはマスターしてほしい」という問題パターンの指定(特に算数)をしてもらうことです。

■理社は暗記してから宿題?

理社の勉強のしかたについては、なんとなくつかめないまま高学年まで過ごしてしまうお子さんがたくさんいます。
予習シリーズなど塾のテキストをひととおり暗記させてから宿題となると、それなりの時間と手間を取られます。塾から帰ったその日にやるのは難しいですね。

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」で主任相談員ご一緒している辻義夫氏との共著「いちばん得する中学受験」で辻氏も述べておられますが、塾からの帰り道や帰ってからの10分の使い方がポイントです。

たとえばお母さんが塾にお迎えに行くなら、その帰り道の「今日はどんなことを習った?」「先生がいちばん大切って言ってたことは何かな?」といった会話で、塾の授業を思い出させてあげましょう。
そして帰ってから、実際にテキストやノートを見ながら、どんなことを習ったかをお子さんに説明してもらうのです。これが「復習」です。

「復習=宿題演習」と考える方も多いのですが、復習と宿題演習は分けて考えましょう。塾から帰ったその日は(帰宅時間が早く余裕がある日は別ですが)、短時間の復習だけして寝かせ、翌日にあらためて宿題です。

■4年生は「少し手抜き」と感じるくらいでちょうどいい

「先生、テキストに書いてあることを全部完璧にやっているのに、テストではテキストに載ってないことが出るんです。どうなっているんでしょう?」
熱心な親御さんからの家庭教師のお問い合わせで、そんな質問を受けることがあります。

ずいぶん「暗記型」の勉強になってしまっているなぁ、と思うのですが、4年生のうちは「テキストを完璧に」という意識をそんなに強く持たなくても大丈夫です。
むしろしっかり塾を活用して「やるべきこと」の取捨選択を行うことが大切です。
4年生のうちに「勉強は辛くて苦しいもの」という感覚をつけさせないことです。

毎週、塾のテキストを丸暗記に近い学習でがんばって上位クラスにいる子は、5年生で成績が下がってきます。逆に、4年生のうちは取捨選択でやるべきことを絞って「そこそこ」の成績の子のほうが5年生でがんばれたりするものです。

4年生で、親子ともヘトヘトにならないような学習サイクルを作ることが大切ですね。

勉強の「目的」は?

■セミナーに登壇します
4月14日(土)、セミナーに登壇します。
日本経済新聞社主催の「「受験」で成功を収めるために!日経Wアカデミー「親御様のための中学受験スクール」と題するもので、講師は私を含め5名。
私のパートは14日(土)ですが、セミナー自体は2日間開催されます(14日と21日、いずれも土曜日です)。
私のパートは「結果につなげる 家庭学習&塾の活用法を徹底解説 ~親ができること 塾ができること~」というテーマでお話しします。
私以外の弁士の方々、啓明舎塾長の後藤卓也氏、水王舎代表取締役の出口汪氏、算数教育家の安浪京子氏などとご一緒できるのも楽しみにしています。
有料とはなりますが、内容の濃い2日間になります(私も自分のパート、かなり気合を入れて準備しています!)ので、興味のある方は以下のページを覗いてみてください。
https://www.nikkei4946.com/seminar/seminar.aspx?ID=2299&TYPE=
■「なぜそうなる?」「だったらどうなる?」
いろいろなところで話していることですが、勉強には「なぜそうなる?」を考えるアプローチと「だったらどうなる?」を考えるアプローチのバランスが大切だと、最近強く感じています。
問題を前にして考えるとき、「なぜそうなのか」を考えることは大切なことです。
なぜこの考え方で解けるのかを考えることは、問題解決には必須です。
これを考えることなく「公式をまる覚え」のような学習をしてしまうと、学ぶことの楽しさは感じられません。
受験勉強をするうち勉強嫌いになってしまうお子さんの多くは、このパターンです。
一方で、「だったらどうなる?」という思考も、実際の問題解決には必要です。
公式の根本原理である「なぜそうなのか」はおいておいて、「それが正しいのなら、問題解決にどのように活かせるか」と考える思考です。
根源的に正しいかどうかを自分が理解することも大切ですが、それを使ってどんな問題が解決できるか、という視点ももちろん大切です。
「テストで点を取る」という視点では大事なことです。
どちらも大切な思考で、バランスよく使いたいですね。
■目的は「問題を解決すること」
中学受験で合格を手にする、というのがもちろん当面の目標ではありますが、もちろんその先もお子さんの人生は続きます。
目の前にある問題をどうやって解決するか。
そんなシチュエーションに、お子さんは今後どんどん直面するでしょう。
その時その時にお子さんが対応できるように、ということを考えると、「暗記型」で解き方を暗記するような勉強は避けるのがよさそうですね。

「問題を解く」と聞くと、なんだか「机の上の勉強」と考えてしまいがちですが、将来の「問題解決」の予行演習をしていると考えると、いかに勉強が大切かがわかります。
私たち大人が「勉強する意味」をしっかりお子さんたちに伝えていきたいものです。


お母さんは「第二の先生」!?

■お母さんもいっしょに勉強しましょう

私はお子さんたちに「リビング学習」をすすめていて、うかがったご家庭でお子さんを指導する際も、できれば横でお母さんに授業を見てもらうようにしています。
それは、お子さんが頑張っている姿を見てあげてほしいからでもあり、お子さんへの声かけの参考にしてほしいからでもあります。

お母さんの中には、お子さん以上に私の話に興味を示される方もいます。
そして、お母さん自身が教えられるくらいに、科目の内容を理解されることもあります。

私たちは家庭教師としてご家庭にお邪魔し、お子さんたちを指導するわけなのですが、せいぜい行けるのは週1〜2回。合計ほんの数時間です。
残りの膨大な時間でうまく学習サイクルが回っていくには、ご家庭の力が必ず必要なのです。

お母さんが「第2の先生」になってくだされば、非常に効率よく成績を上げることができるというわけです。

■大人には大人にできることがある

「私が教えるなんて・・・」と思われる方もいらっしゃると思います。
塾によっては「お母さんは教えないでください。塾の教え方と違ったらお子さんが混乱します。」と仰る場合もあります。

確かに「親が下手に教えたら余計に子どもが混乱してしまって・・・」というお話を聞くことはあります。
でも実際に教えることはしなくても、お子さんの思考を導くことはできます。

「その数字は、どうしてそうなったのかな?」
「そしたら、次に何がわかりそう?」

この2つのフレーズを上手に使ってあげるだけで、お子さんの思考をスムーズに導いてあげることができるのです。
その参考にしていただくためにも、授業を見ていただいているのです。

■教えてくれる先生=いい先生 ではない

「家庭教師の仕事って何ですか?」

そんな質問をしたときに、どんな答えが返ってくるか。

「ご家庭に伺って、お子さんに勉強を教える仕事です」

そんな答えが帰ってきたら、要注意かもしれません。

もちろん勉強を教えるのですが、ご家庭のパートナーとして、自分がそこにいない時間までケアしてあげられるようになれれば、自ずとお子さんの成績は上がります。
様々な先生と話をする機会がありますが「この先生はとてもいい先生だな」と思う方は、もれなく「ご家庭トータルで受験勉強がうまくいくように」と意識して行動しておられるように感じます。

「先生に任せる」

実はこれがいちばん損で、「先生とチームを組む」という感覚で家庭教師や塾の先生とおつき合いするのがいいと思います。

▼2022年11月18日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「<志望校・併願校の決め方 校風、偏差値と問題傾向から決める! 合格するための受験校の選び方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年10月28日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「小学4・5・6年生対象 めざせ合格「過去問」の正しい使い方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年9月30日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「飛躍的に成績を上げる!苦手克服 勉強法」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年9月10日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「【4・5年生】9月から偏差値10UPを狙うオンラインセミナー  毎年2学期に成績を上げるご家庭がやっている10個のこと」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年8月5日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験の「基本のキ!」令和4年度版 最新の中高一貫校の選び方から受験の傾向まで全部分かる!」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年7月21日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「【2022年夏】確実に成績が上がる夏期講習の受け方 3つのポイント」にて、講師を担当させていただきました。。

▼2022年7月8日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「夏休みの学習計画!うまくいく方法  夏期講習を有効活用して力をつける!学習戦略の立て方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年6月24日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験を迷っている!?保護者必見セミナー 未就学・小学低学年から、親が知っておきたい「中学受験」の実像」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年5月27日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「自分で学習する子の育て方  中学受験、高校受験でも生きてくる「子が自走する学習法」を伝授します」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年5月26日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「6年夏休みに成績を大きく伸ばす6月・7月の過ごし方」にて、講師を担当させていただきました。。

▼2022年4月22日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「家庭学習のやり方を指南  塾に通っているだけで、安心していませんか?」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年4月14日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「夏休みまでに偏差値5UP 6年生GWで成績を上げる10のポイント」にて、講師を担当させていただきました。。

▼2022年3月18日(金)

「「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「頭のいい子が育つ! 学習環境のつくり方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年2月25日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験セミナーわが子の合格に必要な学習は?」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年12月17日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験・合格する家庭のつくり方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年11月19日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験合格つかむ「過去問」使い方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年10月22日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験合格つかむ「過去問」使い方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年9月24日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「苦手克服し成績を上げるコツ」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年7月16日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「7/16入試にも役立つ夏休み自由研究対策セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年6月26日(土)

新渡戸文化学園が主催するオンラインセミナー「中学受験へ向かうみなさまへ 中学受験って何? 大切なことは何?」をにて、講師を担当させていただきました。

▼2021年6月25日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「親が知りたい中学受験のキホン」をにて、講師を担当させていただきました。

▼2020年10月14日(水)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験セミナー第2弾!過去問を活⽤する家庭学習のコツ」をにて、講師を担当させていただきました。にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年9月29日(火)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験 コロナで変わる!併願校の選び⽅/合格を導くための模試の問題⽤紙・答案⽤紙活⽤法」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年6月12日(金)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「ウィズコロナ時代の中学受験を成功させる夏の過ごし方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年6月6日(土)

増進堂 受験研究社が主催するオンラインセミナー「学校再開・塾再開にどう向き合うか」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年2月19日(水)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年首都圏中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年2 月6日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年関西中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2019年10 月11日(金)

淑徳与野幼稚園が主催する講演会「父母講座 我が子への根拠の無い信頼の大切さ」にて、講師を担当させていただきました。

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