月: 2018年2月
2018年の入試もほぼ終わり、名門指導会の講師たちとともに問題分析を重ねています。
■「思考力問題」が増えた?
理科の入試問題を分析していると、どの学校も思考力を問いたい、考える力のある子を選抜したいという意図を持って入試問題を作成されていると強く感じます。
もちろん、思考力のある子をとりたくないなんて学校はないわけで、過去も今も学校の入試問題作成者は懸命に入試問題をく工夫されているのでしょうが、ここ2〜3年は、さらにそれを強く感じます。
ただ、「相手は12才の小学6年生である」ということを考えると、あまり突飛で大人向けな問題にせず、12歳なりに様々なことに興味を持ち、しっかり思考力や観察力を養ってきたかどうかをみる問題作成は、とても難しいと思います。
そのあたりのセンスというか、さすがと思わせるのは麻布の問題だと前回述べましたが、武蔵の「お土産問題」も相変わらずユニークです。
袋の中に入っているものに関して洞察するというのがいつものパターンですが、今年は食品の保存などに使うジッパー付きのビニール袋についてでした。
ふだん何気なく使っているものですが、考えてみれば開けやすく、勝手には開きにくいつくりはどうなっているのか。
まさに子どもなりの観察力を問う、良い問題と感じました。
麻布中も数年前、様々な飲み物のペットボトルについて考察させる問題を出題していましたが、ふだんから「もののつくり」に関して考える習慣をつけておくといいですね。
■セミナーを行います
上記のような入試分析を踏まえ、2018年2月21日に渋谷でセミナーを行います。
このコラムをお読みいただいている頃には、すでにセミナー後かもしれません。
とても好評で、たくさんのキャンセル待ちをいただいているので、同じ内容のセミナーを再度行うつもりにしています。
私が主宰する家庭教師「名門指導会」主催のものも含めて、これで今年に入ってセミナーはすでに2回目。
大・小様々、そしてテーマも様々に、今年もできるだけ開催していきます。
■上位校だけが中学受験じゃない
今関わらせていただいている書籍のテーマが、いわば「みんなの中学受験」なのですが、「みんなの」というのは「中学受験は限られた人たちだけの、特別なものじゃない」というニュアンスです。
「別にトップ校を狙うわけじゃないし、うちには関係ない」
「小学生のうちは外を駆け回らせてあげたい」
「友達と遊べないなんて可愛そう」
そんなイメージを持っている方も多い、中学受験。
でも、ある日突然
「ぼく、中学受験したい!」
とお子さんが言い出すかもしれません。
あるいは仲良くしていた友達が「中学受験する」と宣言、受験準備に入ったりして、心がざわつくようなこともあるかもしれません。
私は昔から「日常生活の延長線上に中学受験もあるべき」と思っていますが、近年ますます「身近」なものになってきたのではとも思います。
なにより「現実、中学受験するとなったらどうなるの?」という現実的な知識は持っておいて損がないと思います。
そんな「とても身近で現実的な中学受験」といった内容になりそうです。
ある方との共著なのですが、近々みなさんにもご報告できそうです。
興味のある方はお待ちくださいね。
首都圏での入試もほぼ終わり、進学校が決まったお子さんも多いのではないでしょうか。
若干の変動はあったものの、首都圏の主要校の倍率などは例年同様でした。
今年なにより関係者の話題をさらったのが、開成中学校の算数が非常に易しかったこと。
開成出身の名門指導会のトップ講師も「OB会でも話題になるのでは」と言うほどでした。
実は、今年ほどではないにせよ開成、麻布の(筑駒を除けば)トップ2の出題傾向は例年対照的で「処理力の開成、思考力の麻布」という印象を持っている人も多いと思います。
開成の理科、社会の平均点の高さは例年有名で「ミスすると落ちる」典型的な出題です。
受験者平均で8割、合格者平均では9割に迫る平均点は「開成の理社で合格はできないが、不合格はあり得る」という通説を生んでいました。
ところが今年は算数も同傾向。
受験したお子さんたちも戸惑ったでしょう。
算数が得意なお子さんは、試験時間を持て余したのではないでしょうか。
そんな問題でした。
算数で差をつけたい、と思っていたお子さんたちは「なんでこんなに簡単なんだ!?」と思ったでしょう。
一方、麻布は例年通りの「思考力勝負」の出題。
開成とは逆に、受験生が「今まで受験勉強でやってきたことは何なんだ?」と思ってしまうような出題。
その場で条件を与えられ、その場で考える。
使わなければならない知識は最小限。
対照的な2校ですが、「らしい」といえる出題でした。
いずれにしても、何か特徴的な対策をするのが効果的というよりは、算数の「地アタマ」を鍛えるのが効果的と考えられる出題です。
条件設定をその場で与えられて考える麻布、そして「やるべきこと」がわかっている状態でミスなく確実にやりきることが求められる開成。
私が例年楽しみにしている2校の問題、今年も「らしい」ものでした。
来年に向け、しっかり準備していきましょう。
皆さん、こんにちは。
塾ソムリエ西村が主催する名門指導会において、関西エリア統括を担当している都関です。
西村のコラムページの場を借りて、関西の情報をお伝えしています。
■関西エリアの2018年度 中学入試を振り返る
少子化が話題になる昨今ではありますが、中学受験をする6年生の人数は、2015年を境に再び上昇傾向にあります。
NHKの「けさのクローズアップ」でも、「首都圏では、今年小学6年生の5人に1人、およそ6万人が中学受験をするとみられるとありました。受験者の数は一時、不況の影響で減りましたが、ここ3年は増え続けています」(1月15日放映)とも報じられていました。
関西エリアでは2018年度の中学入試が終わりましたが、結果をみると、この流れのように、最難関中や人気校の受験は昨年以上に厳しい入試となっています。
下記は、このブログを書いている時点で、学校HPに公開されている2018年度と2017年度の入試結果の一部をまとめたものです。
偏差値 | 中学校名 | 2018年 | 2018年 | 実質倍率 | ||
募集定員 | 合格者数 | 2018年 | 2017年 | 増減 | ||
(ポイント) | ||||||
男子64 | 灘 | 男約180 | 252 | 2.88 | 2.76 | 0.12 |
女子64 | 洛南高等学校附属 | 男女280 | 71 | 3.58 | 3.4 | 0.18 |
男子 | 210 | 2.62 | 2.14 | 0.48 | ||
併願64 | ||||||
専願58 | ||||||
男子61 | 東大寺学園 | 男176 | 373 | 2.44 | 2.46 | ▲ 0.02 |
女子63 | 西大和学園 | 女約40 | 51 | 5.61 | 5.49 | 0.12 |
男子60 | 男約180 | 471 | 2.27 | 1.93 | 0.34 | |
男子59 | 大阪星光学院 | 男190 | 284 | 2.57 | 2.1 | 0.47 |
男子59 | 甲陽学院 | 男200 | 222 | 1.81 | 1.68 | 0.13 |
※偏差値は、「浜学園 2018年度入試用 小6 浜学園 公開学力テスト 偏差値一覧」(2017年10月8日時点)より、A判定の値を抜き出したものです。
この表のように、東大寺学園中の実質倍率が2017年度入試と比べてわずかに低くなったことを除くと、最難関中や人気校は、軒並み、前年よりも実質倍率が高くなっています。
特に募集人数が少ない洛南高校附属中と西大和学園中の女子においては、それぞれ約3.6倍、約5.6倍となっており、非常に厳しい入試が続いています。
■2019年度 中学入試予測
正確なところはこれから実施される各塾の新6年生を対象とした模擬テスト受験者数の推移を見ていかなければわかりませんが、国公立・私立中の受験人気はおそらく来年度も続くことと思われます。
というのも、この中学受験人気の大きな要因のひとつに、2020年度の大学入試改革があるからです。
今回の大学入試改革では、これまでの知識重視の形から「思考力」「判断力」「表現力」などを評価する方針に変わり、それにともない、センター試験も「大学入学共通テスト」に変更され、記述式の問題が導入されることになっています。
中学入試を行う中高一貫校であれば、これらの変更にいち早く対応してくれるという期待が、小学生のお子さんを持つ保護者にあることが、ここ数年の中学受験者数の増加に繋がっていると考えられるからです
事実、2017年度の入試でも、首都圏屈指の難関中である駒場東邦中(サピックス 80%合格偏差値60)において、「今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて、感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい」といったように、つるかめ算や相似の解き方などと全く異なる記述の出題があり、中学入試を行う中高一貫校がいち早く2020年度の大学入試改革に対応しようとする動きが見られます。
■これからの受験勉強
とはいうものの、中学入試問題の大半はこれまで通りの問題が中心です。
算数の場合ですと、「記述」といえども多くは「理由説明」になります。
実際、2018年度の灘中2日目算数の問題3に記述問題の出題がありましたが、「第7部分列に並んでいる数のうち、一の位が1である数は、(理由① )から、その個数は第6部分列に並んでいる数の個数と同じです」のように、解き方の理由を書くものでした。
従って、これからの受験生に求められるものは、問題を解く力と、その解き方を「紙の上に書いて残す」力だと言えます。
ですから、もし、お子さんが「条件整理をしない」「途中式を書かない」「答えさえ合っていればいい」といった傾向が見られるようでしたら、6年生の早い段階で、問題の正解・不正解にかかわらず、テキストやテストの解答・解説を読んで自分なりに「納得」し、答案の書き方を学び、採点者に伝わる答案を作る家庭学習となるように、お父さん・お母さんをはじめとした、周りの方々がサポートしてあげていってください。