前回は、「やる気スイッチはない、やる気の階段作りが大切だ」というお話をさせていただきました。

今回は、その声かけの具体例です。

算数で後40点(150点満点で)上げなければいけない状態の時。

※良くない例

(お母さん)「こんな点数で〇〇中学なんてとても無理ね。どうするつもりなの。

あと40点以上上げないと届かないわよ!」

(子ども)「・・・・・」

(お母さん)「塾の復習を2回。計算練習を毎日。基本問題を3回。

練習問題を週テスト前に2回。ちゃんとやってるの。」

(子ども)「だいたい。」

(お母さん)「だいたいだからダメなのよ!どれだけやっているのか今見せなさい!」

これから、どんどんとお母さんのいらだった気持ちが高まっていきますね。

お母さんのキンキン声がそろそろ始まりそうです。

 

この会話には、良くない要素が2つ有ります。

その1つは、”ダブルバインドの質問”です。

「ちゃんとやっているの!」

この質問に対して、子どもは「だいたい」と答えてしかられました。

もし「やっていない」と答えていればどうでしょう。同じようにしかられたはずです。

また、「ちゃんとやっているよ」と答えれば、

「あんなやり方でちゃんとやっていると思っているからダメなのよ!」としかられたはずですね。

このように、どう答えてもしかられることが、子どもにとって予想出来てしまう質問を、

「ダブルバインドの質問」と言います。

このような質問を重ねていくと、子どもはどんどんと話せなくなっていきます。

亀が甲羅の中に頭を隠していくように、子どもは気持ちを押し殺していきます。

そのうちに、「うるせ~くそばば~!」という爆発も当然起こります。

言うことを聞かせようとして発する言葉が、言うことを聞かない子どもを作っていることになります。
 

もう1つの良くない要素です。
いきなり、良い点数をとるための話を始めてしまったことです。

あと40点上げる必要があることをいきなり言われてしまうと、

子どもは”途方もない努力”を要求されたと感じてしまいます。

”ちょっとがんばれば何とかなりそう”と感じることが出来る範疇を大幅に超えてしまっています。
 

※良い例

(お母さん)「マンスリーテストの大問2の小問で8割正解できれば、どう?」

(子ども)「うん、大分上がりそう。」

(お母さん)「どうしたらそうできそう?」

(子ども)「マンスリーの前に、4回分のCランクを説き直そうかな。」

(お母さん)「それいいかも。でもちょっと多くない、Cの△だけでもいいんじゃない。」

(子ども)「そうかな?じゃあ、BとCの△をやってみるよ。」

(お母さん)「偉いわね。それが出来て大問2で正解が3つ増えれば15点も上がるわね。あなただったら

出来そうね。」

(子ども)「うん、やってみる。」
 

例をもう一つ入れておきましょう。

(お母さん)「テストが終わってから家で解くと出来るのに、テストの時に出来ないのはなぜかしら。」

(子ども)「試験の時は、どうしても焦っちゃって思い出せないんだ。」

(お母さん)「そうね。がんばって勉強しているから学力はついているとお母さんも思うわ。得点が上がるま

でほんの少しのところに来ているように思うんだけれど。」

(子ども)「どうしたらいいんだろう。」

(お母さん)「そうね。いきなり宿題をやるんじゃ無くて復習から始めたらどうかしら。」

(子ども)「でも、そんなことをしていると宿題が終わらないよ。」

(お母さん)「そうね、宿題が多いものね。あっそうだ、塾から帰ってきてすぐに復習するのはどうかしたら、

20分だけ。特に算数の授業があった日。」

(子ども)「う~ん、出来るかな。」

(お母さん)「家に帰ってきてから、少し難しく感じた問題の解き方を2~3問だけお母さんに教えてくれる

だけでもいいわ。」

(子ども)「そのぐらいだと出来そう。」

(お母さん)「お母さんがわかるように説明できれば、その問題は完璧に解けるはずだもの。

週2回とて、1ヶ月で8回、20問ぐらいが完璧になったらテストの点数も上がりそうね。」

(子ども)「じゃあ、やってみようかな。」

このような会話の中で「階段」を作りながら、子ども自身が出来ることを見つけてあげてください。

それとともに、もし実行できたら起こりうる嬉しいことも想像させてください。