1年前に相談メールを頂いて、その後お電話を差し上げた方からほぼ1年ぶりにメールを頂きました。


 進学塾の集団授業は、生徒にプレッシャーを与え続けることで学力アップを図ろうとするものです。

そのプレッシャーが適切であれば何の問題も無いのですが、多くの大手塾では過剰な状態が続いているようです。
 

(受験が終わったお母様からのメール)

こんにちは。以前、ご相談させていただいた、○○○の灘コースにおりました○○○○の母です。

西村先生にはわざわざお電話まで頂いてアドバイスを頂きましたので、入試のご報告をと思っておりました。

実は、息子は、灘には落ちてしまいましたが、他に受けた学校、西大和、洛南、函館ラサール、愛光、にはすべて無事に合格しました。

息子は科学者志望なので、スーパーサイエンススクールの西大和を選びました。

(中略)


灘に落ちた後は、しばらくたそがれていましたが、

「泣いても仕方がない。灘は日本一だから、いちばん落ちても仕方がない学校と思える。

ほかの学校は全部受かって、勉強の成果を確認できた。西大和に行って科学甲子園に出場する」

とキッパリ。弱音をはかずに遠距離通学しています。

今は、運動会の装飾係をやったり、科学部に入り、生物班と一緒にビオトープという池を校庭に掘ったり、

休日には神戸に住む科学部の先輩と芦屋川に生物を採集しに出かけております。

忙しくて「充実している」と明るい笑顔で暮らしています。


(中略)


振り返りますと、息子が言うには、○○○の冬期講習は全て取らずに、テキストだけ特別にいただいて家でみっちり苦手な国語を

やったのがよかったというのです。


受ける8校全ての国語の過去問を6年分やり、どこから手をつけるか、問題を何分でこなすか、すべて分析しました。

徹底的に記述の特訓もしました。

その結果、灘コースでは底辺をさまよっていた苦手な国語が、受験直前には○○○で6番になりました。

息子は理数系の方が得意なのですが、受験では一番国語が出来たと言っていました。

○○○の算数の先生が厳しすぎたので、家でやることでプレッシャーがなくなったのもよかったんだと思います。

それでも落ちてしまうのが灘という学校なのですが、息子はチャレンジすることで納得できたようです。
 

しかしながら、この方法は人にはあまりすすめられません。

なぜなら私は結婚前、出版社で児童文学の編集者をしており、入試問題にでてくる作者はお会いした方も多く、国語は得意なのです。

冬休みは、お会いした作者の方のエピソードを交えながら、記述の添削をしたり、きちんとお正月は休んでおせちを食べたり、

2人で笑いながら勉強したので、今でも息子は楽しかったと言ってくれます。

(落ちてしまった後も、決して私を責めなかったのでかえってつらかったです)


結果、○○○の灘の合格者は激減し、担当の先生は他塾に移ってしまいました。

敗因は算数の、点が取れないと怒る授業にあったと私は思っています。

子供には、苦手なところを怒るのではなく、得意なところをほめた方がいいと今でも考えています。

今は、灘の落ち武者の先輩たちと、何点差で落ちたかなんて話をしながら(笑)楽しんでいるようで、

落ちた痛みを知ったこともかえってよかったのではないでしょうか。

塾にすべてをささげずに、ゲームをやったりちゃんと休んだりしながら勉強していたので、受験後にヌケガラにもなりませんでした。

まだ中学生活ははじまったばかりですが、受験の成功というのは合否だけではないのかもしれないと実感しています。

息子と一緒に追い込み勉強をしたことで、子離れ前に楽しい思い出もできました。


(中略)

受験で悩んでいた時、一番参考になったのは、西村先生の考え方や本だったことをお伝えしたくてメールしました。

長くなってすみません。息子の体験が、悩める受験生の方々に少しでも参考になればと思います。本当にありがとうございました。

                                               (受験が終わったお母様からのメール おわり)


このメールを頂いた後で、電話を入れさせて頂きました。お母様とお話をさせて頂いていると1年前の記憶がしっかりとよみがえってきます。

確か、塾の算数の先生に罵倒されるのが怖くて、得意な算数の成績が下がって困っている、というお話から始まったことを思い出しました。


勉強は楽しいもの。楽しく無ければいけないものだと考えています。

知的好奇心が刺激されそれが満たされたときの快感や、予感に基づいて苦労して解きあげた解答が合っていたときの満足感が、

勉強の原動力であって欲しいと切に祈っています。

ところが、名の通った多くの塾で叱咤激励、時には言葉の暴力が存在しています。

でも、それはその塾のその先生全員がそうではなく一部の先生なのです。

また、同じ言葉を投げつけられても動じないたくましい子供がいる一方で、クラスメイトが叱られているだけで萎縮してしまうような

繊細な子もいます。

一般論としてはなかなかお話しできないことだと考えています。

part2では、過去の事例を挙げながらお話ししていきたいと考えています。