月: 2012年11月

中学受験時の苦手が、大学受験の足を引っ張る

私が主催する名門指導会は、HPでは中学受験専門とうたっています。
ところが内情は実はそうではないのです。
中学受験から引き続いてという生徒もいますし、新規に中学生や高校生の指導をすることもあります。
今では全体の30%以上が中学生や高校生となっています。

中学生や高校生の理系教科の指導をしていて切実に感じるのは、
「比や割合の感覚」・「比や割合の処理」と「速さの感覚」・「速さの処理」の大切さです。

モル濃度から始まって中和滴定にいたる一連の化学カリキュラムは、比と割合そのものです。
 これとこれが比例していると理解出来れば、公式を無闇に覚える必要なく解く事が出来ますし、
公式を自分で素早く作ることも出来ます。
元々、覚えなければいけない項目が多い化学において、計算公式を機械的に
覚えていかなければいけないとしたら、その教科をセンター試験に利用出来るレベルに
持ち上げるのはほぼ不可能です。

物理においては、速さの感覚が大切です。
速さが一定(等速直線運動)なのか、速さがぐーんと増えていく(等加速度運動)なのかという
名前と感覚の一致。
また、「速さと時間とのグラフにおいてある時間までの面積が進んだ距離にあたる」という理解。
これらは全て中学受験時に身に付けることが出来ることです。
速さを縦に、時間を横に書く面積図において、「その面積が進んだ距離にあたる」ことを、
当然のこととして理解出来ている生徒は有利です。
例えば、s=1/2gt^2は、v=gtの比例のグラフの面積に過ぎないと理解すれば、
覚える必要がなくなります。
 
中学受験の学習は、中学に合格することを目的に行うわけですが、その過程で得られる
いろいろな気づきや処理の工夫は大学受験において強い武器になります。
ところが、機械的な暗記量で勝負をしようとしている中学受験生が多い事が非常に多いのです。
中学受験生を教えていて、「この子は中学になっても大丈夫」・「この子は中学になったら心配」
と感じる事があります。
その安心感や不安感が数年後に現実のものになっていることが多いのです。

目の前の塾の復習テストをクリアーする事だけを目的にするのではなく、正しく頭を使った学習、
将来も使える学習方法を学ぶ事を目標に学習を続けて欲しいと願っています。

学習は前頭葉の働きだけでは無い ー大切な身体感覚ー

小5生は、今多くの塾で通過算をやっています。
この単元は、「(トンネルの長さ+列車の長さ)÷速さ 
で通過する時間が出る」と丸暗する子が多く出現する単元です。

これまで、丸暗記の算数は良くないと何度も書いてきました。
どの単元でも「公式を丸暗記してその単元をやり過ごそう」とする子は何人もいるのですが、
この通過算ではその割合がグッと増えてしまいます。

通過算を公式の丸暗記に頼る子には、いくつかの特徴があります。
まず、図を書こうとしないという顕著な傾向があります。
その図を書こうとしない原因は、「図を書くことを面倒くさがる」ことと「図が書けない」に分かれます。
この「図が書けない」子供たちに関わる事を今回は書いて行きたいと思います。
 「列車が別の列車に追いついて追い越す」事がどのような状態を示しているのかが理解出来ない。
2つの列車がどのような動きをしているのかが理解出来ない。
これが「図が書けない」原因の多くを占めています。
2本の鉛筆を列車に見立てて、子供に動かせてみようとすると、うまく動かせないことが多いのです。

うちの田舎では、線路は単線だから列車が列車を追い越すことがないから分からない
というツッコミにたいしては、中央線の複々線区間に住んでいる子供たちの中にもちゃんと
存在する事を反例にしておきます。

また、通過算の苦手な子供と時計算の苦手な子供は多くの割合で重なります。
長針をぐるぐる回してみると、短針はゆっくりと動いて、何度も何度も長針が追い抜いていく事を
理解していないようです。

「1時と2時の間で、時計の長針と短針が90°になるのは何時何分でしょう」
という問題に対して、
1時の時計の針を書かせた後、「始めて90°になる時の針をだいたいで良いから書いてごらん」
と言っても書けない子が多いのです。

近頃の時計は良く出来ていて、時刻が狂ったから針を回して合わせるという労力が
ほとんど必要ありません。
壊れるまで半永久的に合わせる必要がない電波時計すらありますから。
止まってしまった柱時計の時間を合わせるには、
「次に短針を追い抜いた後のこの場所まで長針をまわせばいいんだ」
というように、ほんの少しだけ先の状態を予想しながら動かします。
そして、その予想通りに針が動き予定していたところで針を止める。

このような体験がかなり大切な事なんじゃないだろうか、と近頃ますます強く感じるようになって来ました。

集団の学習環境(学校や進学塾)では、情報の伝達に重きを置いて運営されます。
先生が教壇に立って、話し言葉や板書によって情報を子供たちに伝えます。
一方、情報の受取手である子供たちは、同じ情報を受け取ったにも関わらず、
「何のことか分からない」
「何となく分かる」
「ああなるほどと思えるほどによく分かる」というように理解の度合いに大きな差が生じます。

それは、聞き手である子供が、身体感覚として理解出来たかどうかに関わっているように考えています。
「先生が話してくれていることは、あのときのあの時に感じたことなんだ」と感じる事が出来たときに、
「あっ、なるほど!」とハタと膝を打つような情動がわき起こります。

教え方のうまい先生は、「まるで子供たちに見えるように」「まるで子供たちが触っているように」話をします。逆に人気の無い先生は、情報の正確な伝達だけに注視しがちです。
伝達者側の出来不出来の差は大きいのですが、それはそれとして、
情報を受ける側、被伝達者側の受信感度を高める努力が大切だと思います。

身体感覚を伴った経験の量と質が共に大切だと思うのですが、いかがでしょうか。
いろいろなものを触った、触れて動かしてみた、見た、匂いをかいでみた、
このような経験を小さな頃からたくさんたくさんさせていただきたいのです。

脳科学の専門家でも無い私が言うのもおこがましいのですが、そのような身体感覚を伴った経験が、
側頭葉や海馬の働きを活発にしてくれるものの1つだと感じています。

小6入試直前 過去問はなぜ大切か

入試本番まで100日を切りました。
日々の宿題をこなしながら、志望校の過去問を解かれていることと思います。
制限時間を決めて、集中して解くのは当然必要な事なのですが、
解き終わった後の復習のやり方次第で効果は何倍も異なってきます。

大切なのは、
(1) 学校毎の問題の癖を体感する。

(2) 失点した問題が、正解すべき問題だったのか、捨て問だったのかの判断をする。
正解すべき問題だったのに間違った場合は、なぜ間違ったのか、なぜ解き方を思いつかなかったのかを分析。

(3) 入試本番で類似問題が出たときに、どんな行動(作業)をするのかのイメージトレーニング。

この3つになります。

一番いけないのは、やりっ放しです。得点を計算して終わりというのでは、あまり効果はありません。

(1)について
入試問題は中学校毎にいろいろと癖があります。
・易しい問題から順序よく並んでいる学校。
・難しい問題が途中にある学校。
・難しい問題でも、小問1が易しく作られている学校。
・方程式的な解法が有効な問題を必ず出してくる学校。
・解き方が、読んだだけでは分からずに、少し作業を始めないと分からない学校。
・問題文が長い学校。
・問題文が不明瞭で、出題者の意図をとらえにくい学校。
・問題数が多すぎる学校。
・高校入試のお下がり問題を出しがちな学校。
・指導要領を平気ではみ出す学校。
・ありきたりの問題集の中にあるような問題を徹底的に避ける学校。

このような癖は数年続く事が多く、学校によっては10年近くも継続していることがあります。
このような、学校毎の分析は大手塾の志望校別日曜特訓を担当されている先生方は
良く研究されています。
志望校別特訓は、その合格者数の増減が経営に直結しますから、
どこの大手塾もエース級の先生グループが担当します。

志望校別日曜特訓で先生が話される内容を参考にしながら、
上記の項目を子供なりに知っておくことが大切なのです。
そして、体感した感触を言葉にして表現させておくことが、お子さんの行動に結びつく事になります。

(2)について。
 やるべき問題か捨てるべき問題かは、一概に決めるわけに行きません。
・安全に合格するために合格者平均点を目指すのか、ギリギリ合格を目指すのか。
・その学校に頻出の問題タイプかそうで無いのか。
・子供の得意・不得意。
上記のような要素によって大きく変わってくるものです。
信頼できる第三者が関わっている場合は、その方に分析を任すののも一法です。
そうした方がいらっしゃらない場合は、塾の先生に相談しながら、親御さんとお子さんとで
判断していくことになります。

(3)について。
分からない問題に当たったときに、例えば、
・「読み落としが無いかどうか」と念じながら読み返してみる。
・「まだ使っていない数字や条件はないか」と念じながら読み返してみる。
・「どんな図を描けば解けそうか」と考えてみる。
時には、
・とりあえず、それは飛ばして先に進む。
これが大切な子供もいます。
ああでもないこうでもないと考え込んで、立ち止まってしまうタイプのお子さんは意外に多いのです。

このように、やるべき事がたくさんありますから、
解いて・答え合わせをして・間違いを確認して・解き直しをして、というように、
1教科50分のテストでも、合計2時間あまりの時間がかかることになります。

まだ、本格的に過去問を始めていない方は、そろそろ本腰を入れられることをお勧めします。

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「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「<志望校・併願校の決め方 校風、偏差値と問題傾向から決める! 合格するための受験校の選び方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年10月28日(金)

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