家庭教師を依頼されるお子さん方の所属塾は、年によって大きく偏りが出ます。
特に受験を間近に控えた6年生の所属塾です。
昨年は日能研の小6の生徒が中心でした。
ところが今年はサピックスのお子さんが多いのです。

昨年は、日能研のテキスト改訂の影響だろうと思います。
パターン暗記が多かったテキストから、学習の本質に迫ろうという意欲に満ちたテキストへの
改訂だったのですが、自学自習のやり方がわからない子供たちにとっては使いにくいことが
多かったようです。

今年、サピックスのお子さん方が多い理由がどうもはっきりしなかったのです。
ところが、今週の単元を教えてみておぼろげながら見えてきました。

今週の小6算数は、図形の移動です。
回転移動をした図形の軌跡について長さを求めたり面積を求めたりする単元です。
テキストのA問題から他塾より少し難しめです。中堅校から中堅上位校に出題されるレベルです。そしてC問題で既に御三家や御三家受験者の併願校レベルの問題が入っています。
DやE問題はそれ以上です。

それらの問題を解説しながら、ふと目を動かしたときに、ダイニングテーブルの端においてある
サピックスの合格実績のプリントが目に入りました。
開成○○○人・桜蔭○○人・・・と印刷してあります。
それを見た瞬間に、何となく今年はサピックスのお子さん方が多い理由がわかったように
感じたのです。
サピックスでは、困っている子が増えつつあるんじゃないだろうかと。

サピックスの、この上位校の圧倒的な合格者数は、他の大手塾の脅威でしょう。
これが、合格実績が外側に与える影響です。
でも、この合格者数がサピックスの内側に与える影響を考える必要があると感じたのです。
サピックスには、いわゆる出来る子が多く集まっていることは異論の無いところでしょう。
サピックスにおいては御三家を志望する事は何も特別なことではなくて普通のことです。
それが、子供たちを教えている講師の方々の気持ちに染みこんでいるんだろうと感じたのです。

今、私が教えにうかがわせて頂いている何人かのサピックス6年生のお子さんは、
たまたま同じようなクラスにいます。
通っている教室は異なるのですが。
だからといって、同じ問題を説明する時に同じ解説では済まないのです。
なぜそうなるかを説明することによって理解しやすくなるお子さんもいますし、その問題の
発展型を解かせることによって理解が深まる子もいます。
ゆっくりと話す必要のあるお子さん、早口が許されるお子さん、複数回説明する必要がある
お子さん。
同じような位置のクラスにいるにも関わらず、一人一人の頭脳の働き方が大きく異なるのです。

集団指導塾である限り、一人一人にあわせた教え方は出来ません。
教壇に立つ講師の方々が、そのクラスのモデルをイメージして授業を進めることになります。
そのモデルイメージは、多くの場合、クラスの平均値より少し上になります。

子供たちを教える場合は、聞き取りスピード・理解度の深さ・知識量・知識のアウトプットスピード
・インプットスピードなど、いろいろな要素についてモデルイメージを持って教える事になるはず
なのです。
それぞれの要素において、そのクラスの平均値より少し上がモデルイメージになります。

この、クラス毎のモデルイメージが上に引っ張られがちになるのではないかと
かすかな不安を感じたのです。

実は、このモデルイメージを上手に作ることが出来るようになるには、そのレベルの
クラス担当の経験値が必要になります。
経験値が上がれば上手にイメージすることが出来るようになります。
私自身の経験から、出来る子を多く担当しているとどうしても、難しいことをスピーディーに
教えがちになるものだと思っています。

これは、集団指導塾から離れたからこそ言えることです。
集団指導塾でやっていた頃にそんなことを第三者から言われたら、
「そんなことは無い!この子たちの能力や学力は誰よりも知っている!」
と、聞く耳を持たなかったと思います。

上記のようなことを考えながら、上手な塾選びは、
「目指す中学校レベルに多くの生徒をコンスタントに入れている塾」
を探すことから始めることが、やはり大切なんだな感じました。