□悩み方が間違っていませんか(2)□
 
先週は、
これまで、上位クラスをキープしてきた子供たちは、「インプットの達人」であること。
そして、御三家レベルを目指すためには、
「頭脳の引き出しから、この問題を解くために必要な知識を探し出す意欲」
が、必要だというお話をさせていただきました。

今回は、その続きです。

「集団塾のメリットは、カリキュラムがしっかりしていることだ。」
このことは、折に触れお話ししてきましたが、ここで少しまとめておきましょう。
カリキュラムとは、下記の3つです。
1 授業の進行表
2 授業の進行表に伴う教材
3 授業の進行に従って行われる授業の理解度をチェックするテスト

カリキュラムがしっかりしている塾に通っている場合は、授業を受けているだけで、
入試に必要な単元や項目がもれなく、しかもオートマチックに学ぶことが出来ます。
これはこれですごいことなのです。
長年の入試問題の分析によって度重なる改訂努力を継続してきたその塾の宝物です。

そして、塾は、「解き方」を教えてくれます。
それも、研究され尽くした優れた解き方を提示してくれます。
ですから、「インプットの達人」は、授業をしっかりと聞き、家に帰って解き方を覚え込むことで、
理解度をチェックするテストでよい点数が取れてきたのです。

ところが、学習単元が一巡し終わった7月以降は、1週間の学習項目が飛躍的に
増えることになります。

小6の夏期講習はどの大手塾も約30日前後あります。
40日ある夏休みのほとんどを使うことになるのですが、
この30日で小4から小6の一学期までの2年半に習ってきたことのほとんどを
復習することになります。
(夏休み明けに行われる学力テストが、志望校合格に向けて試金石として利用される
理由です。)
また、二学期中に再度全ての単元を復習することになります。
この時期の1週間の学習範囲は小6の一学期までの5倍から10倍になります。

それまで、1週間または1ヶ月単位で確実にインプット出来ていたとしても、これほどに
ハイペースになってくると、普通はうまくいかなくなるものです。
一度は習った内容の復習ですから、もし100%覚え込んでいるならば全く問題は生じません。
ところが、忘れていることが想像以上に多いのです。

長年受験生を教えている私たちでも、小6の二学期には、
「え~、これを忘れちゃったの!」
という、言うべきでは無い台詞が口をついて出てしまうことがあります。
各塾の最上位クラスの生徒ですらそうなのです。

入試直前の5~6ヶ月は、
・既に覚え込んで定着している知識や解き方。
・過去に学習し一度は定着したが今は曖昧になってしまったもの。
・記憶からたぐり寄せることが不可能になってしまったもの。
この3つを上手に分類して学習をしていく必要があります。

概して、始めて学習したときに、
「あまりよくわからないけれど、とりあえずこの方法を使えば正解が出るんだな」
という学習をしてしまった単元や項目は、
「記憶からたぐり寄せることが不可能」
になっている事が多いようです。

また、解き方の順序をちゃんと理解できたもののなかで、始めてそれを習ったときに、
「はじめから終わりまでその筋道が理解でき、理解の過程で、『おっなるほど!』という
気持ちの変化(はたと膝を打つような気持ち)を体験できた項目」
の多くは、既に定着してテストに使える知識や考え方になっています。

ですからこの時期に必要な学習は、
「今必要なその知識が、上記の3つのうちのどの状態で頭脳に収納されているのか」
を見極める事から始める必要があります。

今は使えなくなってしまっている知識や考え方については、
『おっなるほど!』(はたと膝を打つような気持ち)
を体験させる事が理想です。

また、「理解度の3種類」は、確かに個人差が大きいのです。
しかし、その子の今考えていることに寄り添うようにして教えている場合には、
ほとんど予感が的中します。

「とりあえず正解は出せるが、『なぜそうなる?』と聞いてみれば、間違った説明をするはず。」

「知識は曖昧になっているが、その周辺部分で軽くヒントを出してやれば、『おっ』と叫んでから、
得意満面に解き始めそうだ。」

「この問題は正解できるし、説明させればちゃんと言える。
でも、この条件をこのように変えると多分見事に引っかかる。」

私自身のことを振り返ってみると、子供を教えているときには、
このような事をいつも考えているように感じます。
また、私たちのグループの先生方も同じなんだなと、毎週の勉強会で感じます。

手前味噌ですが、「その問題を前にして、子供の理解度について仮説を立て、子供の反応からその仮説の真偽を確認できる」事が、本当のプロの講師(個別指導や家庭教師というパーソナルな講師)だと考えています。