前回は、ご家庭の教育方針やお子様の将来設計に基づく志望校の設定方法について書いてみました。

 

今回は入試問題の傾向による志望校の設定方法です。

 

非常に長文になってしまいました。

最後までお読みいただけないのではと、心配しています。

 

 

□お父さん本気ですか?「女子学院と渋谷教育学院渋谷」□

あるご家庭に体験授業に伺ったときのことです。

お父様が、

「女子学院が第1志望ですが、出来れば渋谷教育学園渋谷も受けさせたいと思っています。」

とおっしゃいました。私は、思わず

「えっ!本気ですか!」

叫んでしまいました。

 

今の学力では、女子学院の合格可能性は50%、渋渋は40%から60%です。

 

どちらか一方の傾向対策に集中する事が出来れば、間違いなく合格させる自信はその時点で持つ事が出来ました。

 

ところが、両方と言われると、入試までの学習スケジュールが思い浮かばないのです。

 

多量の問題を、てきぱきと正確に処理をしていく訓練が中心となる女子学院に対して、じっくりと設問を読み、出題者の意図を確実にくみ取って答える訓練が必要になるのが渋渋です。

 

そのお子さんのこれまでの学習は、明らかに女子学院に向けての学習方法でした。

 

日能研から出される宿題は確実にこなし、それ以外にもいろいろな問題集で、多量の問題を解いていましたから、スピードは充分です。

 

ですから、女子学院に合格させるためには、ミスをせずに確実に解く練習を重ねていけば良い状態です。

 

問題文を素早く正確に読む練習と正確に処理をする訓練です。

 

ところが、渋谷教育学園渋谷の場合は、まず記述力の壁があります。

 

また、その前に出題者の意図を正確にくみ取る練習が必要です。

 

例えば、女子学院の理科の場合は、問題文をじっくりと読まなくても、パッと眺めて文中の単語や数字から問題が予想でき、しかもその予想はほとんど外れません。

 

一方渋渋は、「○○○○ということは分かっている。□□ということも分かっている。その上で△△ということが分かっている場合はどうなるのかを理由を含めて書け。」というような問題です。

 

これまでに覚え込んできた知識を無条件に使えば良いというわけにはいきません。使える条件と使えない条件をきっちりと意識して答えることになります。

 

女子学院対策では、「とにかく早く正確に」と言い続けなければいけませんが、渋渋の場合は、「ゆっくりでも良いから、とにかく設問をじっくり読め。その上
で、何が分かっていて何を答える問題なのかを、自分の頭の中の言葉でとらえ直せ。」と言い続けることになります。

 

これは両立するはずがありません。

 

お父様には、「8月いっぱいまでは、一般的な学力をつけることと、ミスを減らすことを目標にやっていきましょう。言い換えれば日能研のテスト対策です。でも9月以降は、どちらか一方の学校の対策に絞っていきましょう。」と申し上げました。

 

 

 9月以降、

 

「アメリカのトップランクの大学に二桁以上の合格者を出している渋渋の指導体制に魅力を感じます。」というお父様の方針で、渋渋を受けることになりました。

 

結果は、渋谷幕張と渋谷渋谷に合格しました。女子学院と渋渋の両方の対策を続けていたらどうなったかわかりません。

 

入試問題は、学校によって出題傾向が大きく異なります。

 

 

第1志望校を決める場合はもちろんですし、第2第3志望を決めていく場合も、問題傾向を分析されることをお勧めします。

 

□第1志望校の決め方□

ご家庭の教育方針やお子様の将来像、そして学力に見合う学校群の中から、お子様が取り組みやすい出題校を選ぶ事が無難です。

 

 ○○中にどうしても合格させたいという、特定の1校狙いの方も多数いらっしゃいますね。その際は、

 1 合格可能性80%ラインの偏差値に、あと6?8点以内に入っている。

 2 志望校対策に3ヶ月は以上はかける。

の2点に注意してください。

 

 

志望交対策については、親御様のお力だけではやりきれないことが多いのです。

 

その際は、力量ある第3者の力をお借りになることも必要です。

 

その際は、本当にスキルの高い個別指導や家庭教師を捜し当ててください。

 

私たちのように、「警報機の鳴り始めた踏切を、遮断機が降りきる前に無事に渡り終えさせる」ような経験を重ねている所にご相談いただく事が良いのでしょう
が、人員の都合で、ご希望のあったお宅に全て伺うというわけにはいかない事が毎年繰り返されていることが悩みの種です。

 

 

□第2第3志望校の決め方□

第1志望校と問題傾向が似ている所を選んでください。

 

神経質に考えすぎることはありません。あくまでも極端に異なる傾向の学校を選ばなければ大丈夫です。

 ・記述問題が多い、少ない

 ・解答欄が答えだけ、考え方や式の欄がある

 ・問題数が多い、少ない

 ・試行錯誤をする問題が多い、少ない

 ・問題文の文字数が多い、少ない

上記のような問題の特徴から考えて行く事になります。

 

 

大まかには、下記のことを参考にしてください。

 

●開成タイプ

 開成・筑駒・栄光・(渋幕)・栄東・開智・市川・(淺野)

 (開成の国語には、麻布や桜蔭の問題演習も有効です。)

 (筑駒の算数対策には、灘が必須です。)

 (渋幕と開成とは出題傾向は違っていますが、この併願者が多いために加えて

  おきました。)

 

●麻布タイプ

 麻布・渋幕・渋渋・海城・(芝)

 (麻布の国語対策には、開成・桜蔭の問題演習も有効です。物語文を選んでやっ

  てください。)

 (麻布の理科対策は、過去問演習の時に、問題文をしっかりと読み取る練習をす

  るかどうかで、効果は大きく変わります。また、西大和の新出問題や灘の文字

  数の多い問題も無視できません)

 

●桜蔭タイプ

 桜蔭・豊島岡・浦和明の星・(市川)

 (桜蔭の算数は「男まさり」です。開成や灘の1日目を忘れずに。)

 (理科の計算単元は、桜蔭よりも豊島岡の方が難しい年もあります。豊島岡の

 得点に一喜一憂しすぎるのは良くありません。)

 (桜蔭の国語は、開成や麻布も有効です。また、日本女子大附あたりの選択肢

 の問題を、記述形式に変更して解かせるのも有効です。)

 

●女子学院タイプ

 女子学院・鷗友・サレジオ・頌栄

 (女子学院の理科と社会は8割以上を目標に。メモリーチェック・コアプラ

  ス・4科のまとめは、繰り返してください。)

 (女子学院の算数は、近年若干難化傾向。)

 

●慶応タイプ

 慶応中等部・慶応普通部・慶応藤沢湘南・青山学院

(慶応3校の算数は、とにかく基本重視です。基本パターンの学習を念入りに。)

(理科では、風物詩や旬の果物などの生活知識が必要。日常での会話を大切に。)

(難問を解くより、基本を確実に正解する練習を。)

 

●学習院女子タイプ

 学習院女子・白百合・清心

(とにかく記述力が勝負。どの深さまで要求されているのかを見極める練習を重ねてください。)

 

●芝タイプ

 芝・淺野

(万人向きの良問。上位校を狙う人の総合演習問題として最適。)

 

上記のグループ分けは、傾向対策として類似問題の演習問題を選ぶ場合に参考にしていただけると思います。

 

 

 

首都圏の最上位レベルの学校を受験する場合に注意していただきたいのは、関西圏の入試問題の傾向の変化です。

 

算数と理科については、関西圏の入試問題の方が首都圏よりも難しい事はご存じだと思います。

 

また、関西圏で出題された問題が、数年後首都圏で出題される事がよくあります。

 

ですから、必要に応じて関西圏の問題も使っていくと有利になる場合が多くあります。

 

開成・麻布を考えている場合は、灘・東大寺・洛南・西大和の算数や理科は既に必須になっています。

 

また、桜蔭の場合には神戸女学院の算数と理科は無視できません。